またしても泥水の垂れ流し…職務怠慢と脅し

函館建設管理部八雲出張所が遊楽部川の河川工事で、濁水を川に垂れ流していた事実を6月5日に報告したばかりだが、今度は八雲町野田追川の巨大砂防ダム工事で、また濁水の垂れ流しがされている。

2015-12-12・濁水を川に垂れ流し-01・野田追川2015-12-12・濁水を川に垂れ流し-02・野田追川

なぜ、こうも同じ事が繰り返されるのだろうか?

工事現場で濁水の垂れ流しについて保護団体や野鳥の会からも、何度も指摘を受けてきたはずの発注者である函館建設管理部八雲出張所の職員が、「二度と無いように」反省し現場を監督、指導していればこのようなことは発生することはない。職責を果たす「指導」から業者も学び、次の工事に活かせるはずだ。現場の状況は、北海道職員の職務怠慢を示しており、恥ずべき醜態である。

河川法が改正され、環境保全への意識が高まった今日、工事請負業者は環境への配慮に手落ちがあると、入札の制限を受け、仕事に支障が生じる。ここが業者の弱みであり、ここに行政がつけいる傲慢な姿が浮かび上がってくる。何度も繰り返される反省無き行政の仕組みが見えてくる。

昨年(2014年5月24日)、遊楽部川の管理用道路に鉄鋼スラグが敷設されている事実が発覚。当会スタッフが、函館建設管理部治水課へ「河川や地下水へ影響のある場所での鉄鋼スラグの持ち込みは不適切ではないのか」と指摘したところ、「契約では自然石となっている」と回答があった。これは「きな臭いことに巻き込まれたな」と感じていた矢先、業者から当会のスタッフが呼び出しを受けた。業者は当会スタッフ個人の名前を知っていたのだ。北海道函館建設管理部八雲出張所の職員が、指摘した個人名を業者に教え、公務員の守秘義務に違反し、個人情報を伝えていたのである。聞けば、「このことで処分されれば今後、入札が制限されてしまう」との切実な訴えであった。八雲出張所の職員から脅され、業者自ら決着させようとしたのだ。行政から「入札できなくなる」と脅されている業者に呼び出されたわけだから、身の危険を感じることとなった。

この事業を情報公開によって開示請求した。公共事業は工事が終了し、”仕様書通り”に工事が行われたかを”確認”した上で決済される。工事の現場では複数の職員が仕様書通りかを「確認」「監督」「指導」、そして、工事終了後にはさらに仕様書通りかどうかを「検査」し、その上で決済となる。これが血税を扱う行政の職務である。ところが、複数の職員が立ち会いながら、どの段階でも、鉄鋼スラグを発見できなかった。工事後の検査でも見落とすという、あってはならないことが起きていたのだ。

では、なぜそんなことが起きたのか?

理由は簡単だ。「職務怠慢」か「業者との癒着」しかない。行政は業者の弱みにつけ込み、職務上の責任を転嫁して逃れたのだ。今回のこの取材報告で、また業者から呼び出されて怖い目に合うかもしれない。公務員の守秘義務に違反し、個人情報を教えて、業者を送りつけるような職員がいることについて、北海道としての見解を聞きたいものだ。

鉄鋼スラグ

「鉄鋼スラグ」は誰が見ても明らかに違いが分かるものだ。見落としたのは「見ていない」のではなく、”出来レース”だから見る必要もなかったということか。(※現在は、函館建設管理部治水課は、指摘を受けて、”業者の責任で”鉄鋼スラグを回収させている)行政は全く責任を取っていない。当然、職員の処分も無い。

行政が守秘義務に違反して利害関係者に個人名を伝えた行為によって、利害関係者から呼び出されるという実害を受けた。このような事件が起きたことは、刑事上も、民事上もその責任は免れない。争い事を避ける地域社会では、こうしたことが恒常的に行われており、住民同志の対立を喚起して、声を封じ込める手法が普通に行われている。

誰しもが環境が壊されるような工事不備を目にすれば、指摘し、是正を求める声を上げられる地域社会でなければならない。それを報復するかのような対応は、絶対にあってはならないはずだ。工事現場の不祥事や不手際についての行政責任を問い、担当職員は処罰されるという明るい仕組みが当たり前にならなければ何も変わらない。地域を見下し、ふてぶてしく居直り、法令を遵守できない、しない職員がいる限り、同じことが繰り返される。行政職員が保身のために地域も環境も壊す行為は絶対に許されない。