須築川砂防ダムの段階的スリット検証②

せたな町の須築川砂防ダムのスリット化は段階的に行われている。昨年は第一段階として、高さ9mの堤体に間口3.5m×深さ3mのスリットがあけられた。そして、2018年2月に第二段階として、1mを切り下げるという。

須築川は北海道指定の「サクラマス保護河川(禁漁河川)」である。スリット化が終わるまではサクラマスは砂防ダムの上流に上ることは出来ない。サクラマスのライフサイクルは3~4年だ。サクラマス資源の復活を目的にしたスリット化工事に、3年以上かかれば、資源は枯渇することになる。当会は、2018年1月31日に宮崎司代表と河川管理者である渡島総合振興局函館建設管理部今金出張所へ赴き、サクラマス資源復活のため、スリット切り下げ量の増加と3年以内の完成を目指すように申し入れを行った。

第二段階のスリット化工事が終わり、2月16日に現地を視察した。申し入れが聴許されたのだろうか、切り下げ量は1.7mになっており、合計4.7mまで切り下げられた。これで全スリットまで残り4.3mだ。今年度中に切り下げが完了すれば、資源の復活が期待できそうである。

須築川砂防ダムスリット化工事現場の入口看板。漁業資源である「魚が遡上出来るようにしています」と掲げられている。撮影:2018年2月16日
工事関係者から説明を受ける当会代表宮崎司。撮影:2018年2月16日
堤体は3m切り下げ後、更に1,7m切り下げられた。撮影:2018年2月16日
スリット化で切り取られたコンクリート塊。撮影:2018年2月16日
これが堤体のコンクリートを切るワイヤーソーだ。太さ2cmほどのワイヤーに小さなダイヤモンド粒子を埋め込んだ鉄のリングがたくさん付いている。このワイヤーを堤体に穿った穴に通し、機械でぐるぐると回し引きしてコンクリートを切る。撮影:2018年2月16日
トラックに乗せられていたワイヤーソーを引き回す機械。意外に小型で簡単な構造をした機械だ。撮影:2018年2月16日

2月18日には、せたな町の漁師と「せたな町の豊かな海と川を取り戻す会」の人たちの現地視察に同行し、スリット切り口を確認。須築川砂防ダムは重力式ダムで、コンクリートの塊である堤体の断面は台形型。下にいくほど厚みが増し、今回切り下げた下端のコンクリートの厚みは5mある。

2018年2月18日、ひやま漁協と「せたな町の豊かな海と川を取り戻す会」が現地視察。撮影:2018年2月18日
切り下げられた堤体を視察する、早期のスリット化を願っていた漁師たち。足下の堤体の厚みは5mある。撮影:2018年2月18日

ダム堤体をドローンで上空から撮影した。工事の際に切り替えた水の流れはそのままであることが分かる。

間口3.5m、深さ3m+1.7m=4.7mまでのスリット。サクラマスのライフサイクルを考えれば、今年度に一気に下まで切り下げることを切に願う。撮影:2018年2月24日
堤体の堆砂側から望む。上方が下流側である。工事のために川水の流れが切り替えされている。撮影:2018年2月24日
本来は急峻なV字地形を流れる須築川。砂防ダムは流れて来る砂利を止めてしまう。そのため、砂利は上流へと膨大に溜まり、広い河原が形成される。

流れて来る砂利を止める砂防ダムは、ダムの容積以上に、上流に向かって砂利を溜め続ける。その為、本来は存在しない広い河原が形成される。こうしたダムが止める砂利の量は、計画時のダムの容積で判断することは出来ないことがお分かりいただけるだろう。

漁師は見てきた。「砂防ダムがなかった時代、毎年、須築川は真っ黒に染まるほどサクラマスが上った」。太古から長い年月を経て水と砂利の流れがバランスよく安定した川であった証拠だ。砂防ダムが建設された後、サクラマスは激減した。サクラマスの産卵できる川の仕組みを壊してしまったからだ。漁師が願うサクラマス資源の回復は、砂利が下流へと流れ下るようにしなければ見込めない。一刻も早い全スリット化の実現に誰もが期待している。

 

 

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