巨大ダムは、微細な砂やシルト分(泥)ばかりを選り分けて下流へ流す。だから、川は泥川になり、川から魚がいなくなる。
非灌漑期に貯水をカラにする農業用ダムの底を見れば分かる。カラになった巨大ダムの底は泥ばかりになっている。水が抜かれてカラになった石狩川支流当別川の青山ダムを取材した。
青山ダムは、泥ばかりを溜め込んでいることがお分かりいただけるだろう。流れ出す水はご覧のように泥水だ。その結果、川底には微細な砂やシルト分(泥)が堆積し、魚は繁殖が出来なくなる。川底に産み落とされた卵は、微細な砂や泥を被り、窒息してしまうからだ。かつてはサクラマスやサケ、カワヤツメなど魚類が豊富な川だったというが、その面影はもう無い。そして、青山ダムの下流には更に巨大な当別ダムが建設された。
巨大な当別ダムは、溜め込んだ泥を下流に流す。その泥は、石狩川を経由して石狩湾を泥で染めることになる。そればかりか…
この当別ダムには一抹の不安がある。ダム付近に活断層とされる「当別断層」があるからだ。実際に活断層が動き、地表がずれた痕跡がある。青山中央地区にある「道民の森」公園の敷地内に当別断層の露頭があり、当別断層を直に見ることが出来る。下の写真で分かるように右側と左側で大きな段差が出来ている。これがずれた断層面である。地面には亀裂が走っている。
この当別断層の位置がよく分かる図は、下記のサイトで見ることができる。
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/03nov_tobetsu/f04.htm
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sm/ktk/bousaikaigi/zisin/08sankouzuhyou.pdf
活断層「当別断層」と「当別ダム」の位置関係が分かるように地図とGoogle Earthの衛星写真に重ねて表示してみた。
当別断層とダムの位置関係を図示してみれば、ダムのこんなにも近くに断層があることが分かる。もしも当別断層が動けば、ダム湖に面した山が湖面に崩れ落ち、ダム津波が発生する。そうなった時、当別ダムの堤体は津波に耐えられるのだろうか?
地すべりで発生するダム津波の怖さは、イタリアの「バイオントダム」の事例で知ることができる。
また、当別ダム直下の地層がずれれば、堤体そのものが崩壊するかも知れない。地図や衛星写真にダムと断層を重ねてみれば、この場所に巨大ダムを建設することが果たして適切だったのか、疑問を感じるばかりである。当別ダムの下流には住民の暮らしがある。こんな場所に巨大ダムの建設を認めるだけの安全を担保する科学的な裏付けはあるのだろうか?
当別断層が動く確率は低いと言われても、福島第一原発事故や熊本地震のように事後になって「未知の断層」が動いた「想定外」だとして始末される。一昨年の2018年9月6日未明には、胆振東部で震度7の地震(平成30年北海道胆振東部地震)が発生し、JESEA地震科学探査機構「MEGA地震予測」のホームページには、この地震の前に苫小牧から札幌にかけての地表が沈降する現象が見られ、震源となった胆振地方では沈降と隆起が見られたとある。この地震でも、震度や震源が事前に予測された訳ではない。
https://www.jesea.co.jp/earthquake/003/
https://shizensaigaichosashi.jp/higashinihon-zishinhasseikikendo-katsudansou/
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/03nov_tobetsu/index.htm
科学的な地震予知が確立されていないのに、巨大な当別ダムを当別断層と接するような位置に建設したことは、大きな過ちを犯したのではないか?
「人間の愚かさ、自然への理解の欠如、管理の失敗」
人間の過信が引き起こす人災は、日本の巨大ダムでも起き得る。
ダムは安易に建設してはいけない。