厚沢部町小鶉川の水源地で伐採…その後の山腹崩壊土砂崩れ…

今から9年前の2016年、北海道南部の厚沢部町小鶉川の水源地で、山林の伐採が行われた。伏流水が流れる合流部にあたる谷間のこの伐採を見て驚いた。この水が、サケのふ化場施設の養魚池に引かれているからだ。大雨が降れば、山腹崩壊が発生し、崩れ落ちた土砂が流域一帯に押し寄せるのではないか?なぜ、こんな水資源である大切な場所で、伐採が行われたのか?不可解でならなかった。

伐採に伴う作業用の道路が山腹を削って造成されていた。こんな場所が雨で浸食されて崩壊を誘発する。
急斜面の山腹を大きく掘削して作業用道路がつくられていた。雨による浸食で、こうした場所が崩壊することになる。

Google Earthで、伐採位置と伐採前後の森林を見ていただきたい。

そして9年後の2025年8月19日から20日にかけて、厚沢部町鶉で、まとまった雨が降り、危惧していた水源地の現場を取材した。

厚沢部町鶉地区の雨量               出典:日本気象協会・tenki.jp
厚沢部町鶉地区の雨量               出典:日本気象協会・tenki.jp

案の定、伐採地を起点にして、谷の斜面が崩壊し、厚沢部町の重要施設付近まで土砂が押し寄せ、サケふ化場施設への取水用の水路は土砂で埋まっていた。

伐採地の最上端。山腹を掘削してつくられた作業道を起点にして、崩壊している。
伐採地の最上端部の作業道を起点にして崩壊が始まっている。
崩壊地からの土砂は、町の施設寸前まで押し寄せ、湧き水一帯の沢を埋めていた。
道路右側にサケふ化場がある。孵化場へ送る取水用水路は土砂で埋まった。
伐採地の最上端から崩壊した斜面は、植林による再生は不可能だ。
崩壊はさらに拡大して行く様相だ。
崩壊地から流れ出す土砂の直下には、厚沢部町の重要施設がある。

誰が見ても、この沢地形での伐採は、大雨によって浸蝕され、崩壊することは分かりそうなものだ。本来は、伐採してはならない場所だ。この水源地一帯の土砂流出は、「自然災害」とは言い難い。大雨は、「自然」だが、「災害」には原因があったと言えよう。

厚沢部町は、何故このような重要な水源地一帯で伐採を行ったのか、検証はされているのだろうか?

今後、この崩壊地にダムや渓間工などが建設されることになれば、「布石を落として災害を引き起こし、公共事業を創り出す」と言わざるを得ない。もし、そのような工事があれば、国民の血税が無駄に使われないように、会計検査院にこの現場の経緯を精査していただく必要があるだろう。