鉄道運輸機構の職員と面談…その①

2018年7月18日、北海道新幹線トンネル工事に関わる問題について独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構と町議3名と共に面談し説明を受けた。その①:八雲町内の全トンネル工事で発生する有害重金属含有の掘削土の全てを山崎地区山崎川源流部の沢へ投棄することについて その②:各工区の沈砂池の収容能力について その③:PAC処理能力について

その①:住民説明会用「2018-04-19・北海道新幹線建設工事の発生土への対応について(八雲町黒岩地区発生土受入地)」の抜粋資料。

八雲町内の工区が示され、全工区から発生する有害重金属含有掘削土を山崎川の源流部に投棄する予定と示されている。

河川の源流部すなわち地下水源への投棄は、地下水及び河川水の汚染が懸念されることから、我々は、この場所を○とした専門家からの説明を求めていたが、これを機構は拒否。替わりに職員が説明できると言って札幌から工事第三課課長補佐 落合洋則氏が面談にやってきた。

まず驚いたことに、投棄する場所を選定するにあたり、専門家は山崎川の投棄場所を見ていないということである。(先日、山崎川源流部の沢を有害重金属含有掘削土で埋める計画を取りあげたHTBテレビ「イチオシ!」では、大学教授が「地すべりはあるかも知れないが、影響は少ない」と述べている)何れも現地を見もしないでの発言である。

我々は、機構と面談する事前に、山崎川源流部の沢を埋める現場の地質を調査した。地質は7月5日に道央自動車道の八雲町黒岩で土砂崩れで通行止めになった同じ地山である。山崎川源流部でも地すべりの痕跡が多々あり、軟弱で崩れ易い地質であることが分かる。

道央道八雲町黒岩地区の土砂崩れ現場。撮影:2018年7月5日
道央道土砂崩れ現場と同じ地山の有害重金属含有掘削土で沢を埋める山崎川源流部。地すべりの痕跡がいたるところで見られている。撮影:2018年7月10日
有害重金属含有掘削土で埋める沢の地質が見られる林道。ちょっとした雨で土砂崩れが発生。地下水脈から水が噴き出して崩壊していた。撮影:2018年7月13日
土が固まったような地質で、地質は均一ではなく、礫質が見え、そこから水が浸みだしていた。つまり、地下水脈が複雑に存在していることが示唆される。撮影:2018年7月13日

崩れ面は、礫があり、すき間があり、そこから水が浸みだしていた。

Q:「有害重金属含有の掘削土で埋める沢は土を固めたような地質なので、脆く、地すべりしやすいのではないか」「有害重金属が土壌浸透することはないのか」➡A:「投棄する沢の地質は岩盤だから地すべりしない。」「岩盤だから土壌浸透することもない」

Q:「岩盤の岩質は何か…?」➡A:「・・・・・」絶句の後、詳しく説明できると公言していた機構職員は「調べてから回答する」と答えた。

この職員は「岩質が必要なのか…?」と逆に切り返してきた。専門家に代わって説明すると言っていたのに、自分たちが説明するのではなく、住民側に説明させ本題を逸らそうとする独特の話法で切り返してくる。我々は、崩壊した面から水が浸みだしている写真を示し、岩盤に水がしみ込んでいること、また岩盤の質は均一ではなく、礫が存在しているので水は均一に浸透しているのではなく「地下水脈」のように岩盤の中を流れていると指摘し、即ち岩盤の岩質を知る必要があると説明した。しかし、職員は現場の状況も岩質の意味すら理解しておらず、説明する能力は無い。どうせ、こんなことだろうと専門家から話しを聞きたいと事前に強く申し入れていたのに、この始末だ。誠実さは全く感じられない。

住民説明会用のP24の図を見ていただきたい。雨水・浸透水への対策が描かれている。まず、暗渠排水管が土砂で塞がらないという保証は無い。更にこの暗渠排水管の外を水が流れる可能性も否定できない。また、浸透水は図のように排水層のみを流れるという裏付けもない。流水には侵食作用があるのだから、暗渠排水管や排水槽の周辺を侵食すれば空洞ができ、水が滞れば水圧がかかって剥離面が生じ、その結果、陥没したり地すべりする。解説のように雨水や土壌中の水が流れる保証は一つもないのだ。この図は絵に描いた餅である。

更に、機構職員の傲慢さが続く…「地すべりや土壌浸透で、有害重金属が地下水や川に流れ出して汚染した場合、生物蓄積などの影響はないのか」と我々が質問すると、この職員は言葉尻を捉えて「汚染とは何をいうのか…?」「調査が先ではないか…」とたたみ込んで本題をそらしてくる。そして、なんと同席していた若い職員が「あなた方で調べたらよいではないか」と言ったのだ。住民の理解を取り付けるために丁寧な説明をすることを放棄し、無理難題をふっかけてくるのだから、もう、むちゃくちゃな話である。「専門家でなくても我々が説明できる」と言ってやってきたこの機構職員の真意は単に言葉巧みに住民を欺くものだと分かった。

機構職員は、生物蓄積は「無い」と断言している。根拠は「知見がないから」だそうだ。つまり、「知見がない」から、確認する必要が無ければ、調査する必要もないし、我々に指摘されたことに応じる必要もないというわけだ。重金属のうち「銅」は「サケの嗅覚細胞数を減少させる」ことが知られている。ならばヒ素はどうなのか、鉛はどうなのか、ふっ素はどうなのか…影響が十分に推定されることだが、何れも知見がないことを逆手に取って、「影響は無い」と言い、「文句があるならお前たちで調べろ」というわけだ。札幌へ帰ったこの職員は、北海道新幹線建設局局長にどう報告したのだろうか?このような対応をする職員を派遣するということは、局長は事業現場で起きている問題には無関心だということなのか?

北海道新幹線トンネル工事…まだまだ出る出る有害重金属土…疑問だらけの処分の仕方…汚染水が人体や生物、農海産物に与える危険な投棄場所…緊張も責任も微塵も感じていない機構職員…その②その③へつづく。