北海道新幹線・函館↔札幌間の立岩工区(八雲町)で、トンネル掘削から出る有害重金属を含む土砂の扱いについて、新しい事実が出てきた。
3年前、独法・鉄道建設運輸施設整備支援機構(以後、機構)は、トンネル工事の掘削土の有効利用を八雲町に働きかけていたが、その際、機構は八雲町に「有害重金属が含まれている」ことを知らせていなかった。そこで、八雲町は、掘削土の受入先を町の広報誌で募集し、数件の応募を得た。
ところが、今年(2016年)の3月15日に開催された町民説明会で、機構は、掘削土に「自然由来の環境基準を超える有害重金属が含まれている」ことを明らかにしたのである。掘削土の受入先には、町が誇る自然も資源も豊富な遊楽部川沿いであることも明らかにした。
機構は、「遮水シート無しで敷地に盛土しても、有害重金属は浸透途中で土壌に吸着されて、環境基準値以下にまで希釈され、地下水へ排出されるので安全ですよ」と説明したのである。この発言は、有害重金属であっても自然界にもともと存在する「自然由来」のものなので、あたかも何の問題もないかのように、判断を錯誤させる巧みな言い回しを使っていることに、機構への不誠実さ、不信感を否めない。
判断を誤ってはいけない。
誤魔化されてはいけない。
騙されてはいけない。
「有害重金属」そのもの以外の何物でもないのだ。
町民説明会後、井戸水への影響を心配する住民の声や、水産業への影響を懸念する漁業者からの声が上がり、「トンネル掘削土に有害重金属が含まれている」ことが、町民に広く知れ渡ることになった。
機構は、これまで有害重金属を含む掘削土は、遮水シートを敷き詰めた管理型置き場をつくり、そこに盛土し、常に浸透水をモニタリングしながら、適切に対応・管理していくと説明していたのだが、管理型置き場の話は、いつの間にか消えていた。いや、この話はもともと理想理念であり、現実には無かったかのようだ。はなから有害重金属の置き場を、どこにも造っていなかった機構は、町民を騙すことに失敗し、掘削土を持ち出すことが出来なくなってしまった。その結果、写真のように立岩トンネル工事現場の敷地内にどんどん山積みせざるを得なくなっている。
有害重金属「フッ素」や「鉛」を含む掘削土から、土壌浸透しないように、「遮水シート」ではなく「防水シート」を敷いていると説明しているが、その実態は、呆れたものだ。
土壌汚染、地下水汚染、河川水汚染、沿岸海域汚染へと広がっていき、その影響はとめどもなく大きなものになるだろう。当初の説明通りに、管理型の有害重金属置き場を設置して、次の世代に対して禍根を残さないよう、機構は責任を持って管理と対策をするべきだ。
風の強い日に現場を見て、ぞっとした。ここまで意識が欠けているのかと怒りすら感じる。八雲町の基幹産業である酪農業への配慮すらも微塵もない。
新函館農業協同組合八雲基幹支店はこうした事実は知っているのだろうか?機構と各団体とは協議しているから大丈夫という八雲町役場の立場だが、機構は都合の悪い真実は話さない。己の目で、現場を確認するしかないのだ。
機構も、建設会社も有害重金属の扱いの意識が薄く、目に余るずさんな工事現場である。
工事施工者:戸田建設㈱が、現場代理を担っている。
機構は、新幹線は国策だから北海道の田舎者なんて、適当にあしらっておけば良いんだとでも思っていたのだろうか?国の天下り企業が、これ程ずさんな計画しか手がないまま、ひたすらトンネルを掘っている様が、滑稽に見えてくる。
独法・鉄道建設運輸施設整備支援機構は、北海道に新幹線を延伸させることに、闇雲に猛進する前に、この地で暮らす北海道民も、食や観光を支える資源の恩恵を受けている、その北海道の自然環境も大事な財産であることを忘れてはならない。これこそに損失を招きかねない事態を及ぼせば、新幹線を「経済の活性化」などと盛り上がる北海道を欺くことになる。さぁ、どんどん掘って、どんどん溜まるこの残土、一体、どこへどのようにして管理するのか?私たちは、真実のみが知りたい。