2017年11月6日の当会のHP記事に対して、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の担当者から、PAC処理した排水を一時的に溜めて、川に放流する水槽なので、「沈殿槽」ではなく、「放流水槽」であること、「有害重金属含有沈澱物」は、含まれていないと連絡があった。その説明がされると言うので、9日にルコツ工区の現場へ赴いた。
しかし、「PAC処理」と「放流水槽」について改めて説明を受けて、トンネル掘削土による関連処理能力が、こんなにも不十分だったことに愕然とする。
つまり、イラストで解説すれば、このようになる。
「放流水槽」とは名ばかりで、PAC処理しても、これだけの沈澱物が存在し、沈澱機能を有した水槽は、「沈澱槽」と標記しても間違いではない。何より驚いたことに、水中ポンプを装着した2本の排水管で、底に溜まった沈殿物ごと吸い上げて排水していたことである。この沈殿物について、当会が「有害重金属含有沈殿物」と記事で標記したことに対して、鉄道運輸機構の担当者は、「PAC処理後の沈澱物だから問題は無い」と説明したが、その沈殿物に有害性の有無については調べられておらず、「これから検査に出す」と言う。排水は既に6か月以上も続けていたというのにである。
北海道新幹線トンネル工事での濁水処理は、現在、稼働させている処理施設では規模が小さく、沈澱物を取り除くことが出来ないことが露呈した。「処理をしている」という事実だけが免罪符になって、事業者自身「何を排水しているのか」、よくわかっていないのかも知れない。
ヒ素は、岩などの固体に付着したものであれば、PAC処理で除去が可能だが、水に溶融した状態のヒ素は、PAC処理では除去できないとの大学教授の指摘がある。PAC処理後の水、つまり「放流水槽」に沈澱した物質がある以上、処理を免れたヒ素・セレンが含まれたままになっている疑いは濃厚にある。このままでは、地方の小さな町の人が、どんな水を飲もうが、環境が悪化しようが、魚が汚染されようが、所詮は他人ごと。そういう意識しか無いと思わざるを得ないこの現状に、事業担当者、現場責任者も真摯に受け止め、早急の対策と改善を行っていただきたい。