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河床低下が進む十勝川の「新たな治水対策」でサケが増える?
2023年3月22日、河床低下が進む十勝川で「水害への備えと漁業資源回復の両立」を目指し、「新たな治水対策」がNHKのウエブニュースで紹介された。

https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20230322/7000056134.html
つまり、この「最新の治水工事」とは「河道掘削」のことだとある。河床低下が進行している十勝川で「河道掘削」すれば、河床は更に掘り下がり、地下水位も低下し、十勝川が包容する水量が減少する一途となるのではないか。
北海道大学には十勝川に関する論文があり、下記に一部を引用する。
巻末には結論が添えられている。
今から42年も前の1981年に、「河床低下は治水上は好ましいことであるが…」との前置きで、十勝川の地下水の水位低下が進行していることを報告。十勝川の現況を危惧し、警鐘する意味で添えられているようにも読み取れる。よく考えてみよう。地下水の水位低下は十勝川の水量が減ることを意味しているのだ。
42年も前に河床低下の進行が指摘されているのに、これを無視しての「河道掘削」ということになる。河幅を広げ、砂利河床を露出させればさせるだけ、砂利が流され、川底が更にどんどん掘り下がっていく。特に、わき水が「湧き出す」川底ほど、砂利が流され易く、急速に掘り下がり、澪筋は偏っていくものである。澪筋の広がりは失われ、細く単調な流れとなり、多種多様な魚類の生息環境が消えていく。
北海道南部の太平洋に注ぐ八雲町の遊楽部川では、過去に大規模に「河道掘削」が行われ、河道が拡幅された。その後、河床低下は進行し、サケが産卵していた湧水のある川底が掘り下がり、澪筋は偏り、サケの産卵場は激減した。そればかりではない。河床低下は上流へと波及していき、広範囲で川岸崩壊を誘発するので、泥川となり、サケの産卵に適した場所が砂泥で埋まるようになり、自然産卵由来のサケ資源は風前の灯火状態になっている。まさに、不毛の川へと導く「河道掘削」である。
河道掘削の際に護岸基部の川底に敷き詰めた「護床工(コンクリートブロック)」は水面から露出し、川の方へまるで護岸のように垂れ下がってしまった。河床低下恐るべし。
ましてや、湧き水を産卵場にしているサケは、「河道掘削」で湧水が消失すれば、増えるどころか、どんどんいなくなっていくのがオチである。その場しのぎの安易な「河道掘削」は、更なるサケ資源の減少を招く。漁業者にとって死活問題である。
この治水対策議論は、河川工事を異論なく進めるためのサケ資源回復を免罪符に利用しているに過ぎない。(サケの減少は、温暖化のせいだと言っておきながら、こういう工事計画の際には、川の環境のせいだと言う)工事直後は自然が回復したように見える。しかし、「その後」、川は必ず変貌する。科学しようとする立場の人たちは、川に向き合い、魚に向き合い、地域住民や漁業者のためにも抱き合わせ商法のような謀る議論はやめて、河道掘削で起きる「その後」を、しっかり検証して現場の将来を見据えた議論をしていただきたい。
ダムをスリットしたせたな町は、4年連続でサケの漁獲好調!
2023年2月14日付けの北海道新聞記事で、檜山管内(5町)の漁獲量が、せたな町が76%「増」で、他の4町は12~52 %「減」とある。他の4町と異なるのは、せたな町だけがダムのスリット化を手がけていることである。せたな町の”一人勝ち”に見えるのは、ダムのスリット化の効果だと思わざるを得ない。

せたな町では2010年から2河川で、ダムのスリット化に着手して来た。その後、せたな町では2019年から2020年、2021年、2022年と、4年連続で、サケの漁獲量が右肩上がりに増えている。
漁獲されるサケの年齢は3年魚、4年魚だ。ということは、3~4年前の2015年か、2016年頃から、サケの稚魚の生残率が向上したと考えることができる。つまり、スリット化着手後、5年、6年を経過して、サケ稚魚の成育環境がよくなったと推察される。
2022年の秋、せたな町でダムのスリット化をした川では、沢山のサケが川に上り、産卵している姿があった。まだ、産卵環境が回復したとは言い難いが、ダムのスリット化着手前には川底に目立っていたシルト(泥)や微細な砂が無くなってきており、きれいな玉石が見られるようになった。粗い砂は沈澱しやすいので、濁りが速やかに消えて、水が澄みやすくなる。水が速やかに澄めば、人工ふ化放流のサケ稚魚も、自然産卵で生まれたサケ稚魚も、泥水のダメージが軽減され、生残率が向上する結果になる。今後、産卵環境が回復していけば、自然産卵由来のサケが急激に増加していくことだろう。

また、4基の治山ダムをスリット化した小河川でも、多くのサケが遡上し、あちらこちらで産卵が見られた。川岸にはヒグマの足跡が残されていた。冬眠を前にしたヒグマが、飢えて街中を彷徨うこと無くサケを食べる…本来あるべき自然の姿が蘇ろうとしている。親サケをヒグマが腹いっぱい食べても、卵が育つ川の仕組みさえあれば、その光景は未来永劫絶えることは無い。




また、ダムをスリット化した後、河口海域では、茎が太く背丈の高いワカメが繁茂するようになり、岩のりが採れるようになったという。これは、泥水の”質”が変わったからではないだろうか。ダムをスリット化する前は、川岸や海岸では細かいシルト(泥)や微細な砂が目立っていたが、ダムのスリット化後、粗い砂に変わってきた。岩礁を覆っていたシルト(泥)や微細な砂が粗い砂になったことで、岩肌が露出するようになり、岩肌にワカメや岩のりの胞子が付着しやすくなり、発芽し、生育するようになったのではないだろうか。
一方、太平洋側の噴火湾に注ぐ遊楽部川では自然産卵するサケが消滅状態になっている。酷い泥水が流れ、河床はシルト(泥)や微細砂で覆われている。こんな川底に産み落とされたサケの卵は育つ筈もない。例え、ふ化したとしても、この酷い泥水の中をとても生きていけないだろう。もし、この酷い泥水がふ化場のサケ稚魚の養魚池に流れ込んだら、たちまちに稚魚は全滅する。それを分かっていながら、ふ化場からは、こんなに酷い泥水の中にサケ稚魚を放流しているのだ。人知れず、多くのサケ稚魚が命を落としているに違いない。生残率が低下し、その結果が漁獲量の激減になっているのであろう。




ダムを温存させた太平洋側噴火湾とダムをスリットさせた日本海側せたな町の河川環境とサケの漁獲量の推移を、これからも見守り続けていく。
沙流川の支流に、とうとう「平取ダム」竣功…
2022年11月26日、平取町民体育館に於いて平取ダム竣工式が行われた。治水・用水・発電の多目的ダムとして二風谷ダムと合わせて2ダム一事業として平取ダムは建設された。
平取ダムは、沙流川支流の額平川と宿主別川の合流点に建設された。堤高55m、堤長350m、貯水量4,580万㎥。
額平川と宿主別川の合流点の淵では、故萱野茂さんが、「棒を投げたら、棒が倒れないほど沢山のサクラマスがひしめき合っていた」と話されていた。
試験湛水で、既に粘土のような泥が大量に溜まっている。


人と共存しているヒグマまで捕殺。北海道の「人材育成捕獲」
11月8日付けの北海道新聞に「人材育成捕獲」来春拡充の見だしで、北海道がヒグマの捕獲頭数を増やすことが報道された。主たる目的はハンター不足の歯止めにあるようだが、目的の一つとして「冬眠明けのクマに人への警戒感を植え付ければ、人里に出没しにくくなる」という理由が掲げられている。つまり、こうした捕獲を行えば、ヒグマは警戒心を持ち、人里に出没しにくくなるというのだ。

捕獲拡充目的に「ヒグマに人への警戒心を持たす…」と掲げながら、「人への警戒心を持ったヒグマたち」まで次から次に捕獲するのだから、北海道の理念は、もうメチャクチャだ。
北海道のヒグマ対策は驚くほどに、おかしなことだらけだ。
出没中のヒグマの「個体識別が必要だ」として、芳香剤でヒグマを誘引してビデオ撮影している。更に、餌でおびき寄せて体毛採取し、DNA分析することを最優先している。
ここが重要な問題点だ。
これらのデータを収集している間、ヒグマは人里周辺で自由に徘徊できる状態にある。ヒグマは学習能力に優れているから、その間に様々なことを学習して居座るようになる。その結果、手の施しようが無くなり、真駒内や野幌の事例にように、捕殺される。捕殺したヒグマは、画像データやDNAデータに現物と添えて、学術データとして収集される。こうして得たデータがヒグマ出没抑止に役立つのか…?役立っているのか…?個体識別を優先し、のさばらせた挙句に、手に負えなくなって捕殺した際、「あの時に出没していたヒグマだ」と確認する程度で、その他は研究者の成果品となる。こうした視点で北海道のヒグマ対策を読み解けば、道民の安心安全な暮らしそっちのけで、研究目的や学位論文作成のために莫大な道民の血税を使い、データ収集している姿が見えてくる。

標茶町の「OSO18」と名付けられたヒグマの対応についても、未だビデオ撮影して個体を確認することに奔走している。ビデオ撮影できるくらいなのだから、凡その予測された行動範囲や出没経路で、出没抑止できる筈だ。即ち、出没を抑止する対策を最優先させることこそが、適切なヒグマ対策というものであろう。そうした適切な対応を行わず、今なお放置したままで、ビデオ撮影を続けているのだから、おかしなことだ。
ヒグマ対策の実績は、30年も40年もある。それなのに、未だにヒグマ騒ぎは終息しない。道民の暮らしは危険にさらされ続けている。それはつまり、ヒグマ出没対策の名の下に、調査研究ばかりを行ってきたからに他ならない。頭数を減らせば出没件数が減少するという安易な引き算で、無差別捕殺に踏みきり、誤魔化しているに過ぎない。
人里へ出没させないようにするには、まず、人里への出没情報を得た時点で、ハンターなどヒグマをよく知る熟練者が、「即時に現地へ出向き」➡「出没経路周辺を”電気柵で一時的に”封鎖し」➡「出没抑止の対策をやる」ことだ。これを繰り返せば良いだけのことである。ヒグマに「この辺りは居てはいけない」ことを学習させるまで、出没状況に合わせて電気柵の設置と撤去を繰り返し、人里との境界線をヒグマに教えればよいのだ。電気柵は草が生えるので、維持するのが大変だという意見もあるが、常設させる訳ではないので、草刈りは不要だ。そもそも、どんなに手間暇がかかろうが、ヒグマを殺さないようにする為の予算も取らず、出没抑止の為に労力を惜しまない専門家がいないとは情けない話だ。
北海道にはどこにでもヒグマがいる。そこで暮らしている人たちは、回りにいるヒグマが特に悪さをしなければ捕殺しない。むしろ、悪さをしないヒグマがいた方が、「流れ者のヒグマを寄せ付けないので安全だ」という考え方だ。言い換えれば、毒には毒をもって制す。つまり、人間の暮らしをヒグマから守るために、気心知れたヒグマをガードマンに雇っているということだ。
知床半島ルシャ地区の漁師の番屋では、番屋の回りに沢山のヒグマが徘徊している。ヒグマたちは悪さをすることもなく、番屋の暮らしに何らの支障はない。ここのヒグマたちは何をすれば人が嫌がるかをわきまえ、人との軋轢を避けている。このようなヒグマを北海道の方針通りに次々に捕殺したらどうなるだろう…?縄張りが空き、そこに得体のしれない新参者のヒグマが入り込んでくる。そうなれば、番屋の暮らしはどうなるだろうか…?番屋の暮らしも知らない新参者のヒグマが入り込めば、漁師は危険にさらされることは目に見えている。安泰な番屋の暮らしは一気に崩れ、毎日が不安の日々となる。
言わばこれと同じようなことを、北海道は来春から全道で行おうとしている。この計画の危険性と問題点は、「人への警戒心を持ち、人里に出没しないようにしているヒグマまで捕獲して、人への警戒心を持たない、人里に出没するヒグマの出現を生み出す」ことにあるのだ。「人への警戒心を持ち、人里へ出没しないようにしているヒグマを残し、そうした個体を増やして行く」というのが、本当のヒグマ対策であり、北海道がよく言う「共存」というものであろう。
今回の北海道の「人材育成捕獲」は、道民の暮らしを危険にさらし続けるだけのものである。「人材育成」にかこつけ、善良なヒグマまで撲殺するような行為は見直すべきだ。即刻に、計画を白紙に戻し、ヒグマという動物がどんな動物なのか、今一度考えていただきたい。学位を持つ専門家がいながら、基礎的な知識に欠けているのでは、恥ずかしいし、学位が泣くというものだ。30年も、40年も、莫大な道民の血税を費やして、いったい何を調査研究してきたというのか。人里に出没してはいけない事を学習したヒグマかどうかを見極めることは簡単だ。もし、それは難しいと言う専門家がいるとすれば、基本中の基本、ヒグマとはどういう動物なのかを読み解く目と心が欠如しているからである。せめて、テクノロジーに一切頼らず自力で山に入り、ヒグマを見つけ、自分の目で目の前のヒグマをじっくりと観察するべきだ。
ヒグマを撃つ「人材育成」ではなくて、ヒグマの行動を読み取れる人材育成をこそ考えることが、最も必要な方針だろう。
鵡川のシシャモ、過去最低1.4トンから僅か64㎏に。
「鵡川と言えばシシャモ。シシャモと言えば鵡川」というほどに有名なシシャモの産地が記録的な不漁だ。
道立総合研究機構栽培水試(室蘭)は、「昨夏の高い海水温の影響で多くが稚魚段階で死んだ」と分析。本当だろうか…?道南の太平洋側、八雲町の遊楽部川には分布の南限とするシシャモがいた。しかし、2005年頃には姿を消し、絶滅。大繁殖から絶滅までの経緯を、その現場を見てきた者としては、この水試の見解は疑問だ。
遊楽部川のシシャモ絶滅原因の最初の一歩は、河川事業でシシャモの大産卵場が壊され、資源量を減らすことにはなったが、絶滅の主因ではない。シシャモの卵は湧水に抱かれて育ち、早春に孵化した稚魚は川から海へ下り、沿岸で生活を始める。しかし、春先の雪解け増水の酷い泥水を吸わされた稚魚たちの多くが命を落とし、絶滅に至ったのが真相だ。それ以外の要因はない。

シシャモが産卵する川底の砂礫はシルト分や微細な砂は見られず、さらさらとした「粗い礫」となっている。しかも、川底から湧水が出ている場所だ。ところが、遊楽部川には治山ダムや砂防ダムが数多くあり砂利が止められているため、ダムの下流は川底の砂利が流され、川底がどんどん堀下がった。その上、湧水が豊富なので、噴き出す川底は容易に掘り下がるから、川岸、護岸も崩れて災害が多発。河川管理者は護岸を守るために、このシシャモの大産卵場に袋体床固工(漁網に石を詰め込んだもの)を敷き詰めて、産卵できなくしてしまったのである。主たる産卵場を失ったシシャモは、それでもかろうじて別の場所で産卵していたが、あちこっちで崩れた川岸から流れ出す酷い泥水の影響を受け、息の根を止められてしまったのである。

この酷い泥水を抑止しなければシシャモ資源は残せない。シシャモ資源を残すために道立水産孵化場に調査を依頼したものの、残念ながら2005年にはシシャモの姿が見えなくなり、シシャモ資源の保全策の提言もされぬまま、調査は打ち切り。かくして、遊楽部川のシシャモは絶滅したのである。


鵡川のシシャモの不漁の原因は、遊楽部川のシシャモ絶滅の経緯から、酷い濁り水であることに間違いない。しかし、サケの漁獲量減少の説明同様に「温暖化」としか言わない。「酷い泥水の影響」だと言及する専門家は、不思議なことに誰一人としていないのである。
沿岸にシシャモ稚魚がいる時期に、この写真のような酷い泥水が流れ出せば、その影響を無視することはできない筈だ。
沙流川ではシシャモの産卵場造成事業が行われている。シシャモの産卵条件や卵が育つ仕組みを知らぬままに、単に、産卵に適した砂礫が集まるようにすれば良いと勘違いし、川底にコンクリートの柱を打ち込み、砂利が集まるようにしたものが作られている。沙流川が泥川と化してからはシルト分や微細な砂が溜まる一方で、シシャモが寄りつく気配は無い。この泥川にした根源である二風谷ダムによって、川底が掘り下がり、各所で川岸が崩れ、川岸から多くの立木が倒れ込む。そうした流木は、このシシャモの人工産卵場に引っかかるのである。労して益無しのシシャモ人工産卵場である。


鵡川も、沙流川も、酷い泥水が流れ出し続ける限り、自然産卵由来のシシャモ稚魚は勿論、いくら放流しても稚魚が育つことはない。川底が掘り下がれば、地下水が減少し、川底から湧き出す水量が減る。湧水は多くの魚たちが越冬にも利用していることから、サクラマス幼魚やウグイなど、他の多くの魚種も減ることになる。
湧水の所在は、厳冬期の川を見ればすぐに分かる。川面が結氷しているのに、一部、川面が開いていたり、川岸の砂利が露出しているからだ。沙流川では湧水豊富なところでシシャモが産卵していた。遊楽部川でも然り、湧水はシシャモの卵の生育に大事な役割を担っている。


道立総合研究機構栽培水試(室蘭)は、公の機関であり専門家がいるのだから、「海水温が高かったから稚魚が死んだ」という前に、鵡川や沙流川の、目の前で起こっている春先の雪解けの酷い泥水が、シシャモ稚魚に与えている影響をこそ、重要な課題として検証していただきたいものだ。暖かい湧水で卵が育ち、川から海へ泳ぎ出し沿岸で生活を始める頃、雪どけ増水の酷い泥水にか弱いシシャモの稚魚たちは晒され、泥水を吸わされ死んでいく。いくら人工孵化放流したシシャモ稚魚であってもだ。
ネイティブなシシャモが「幻」と化すのは、そう遠くは無い…いや実はもう、鵡川固有のシシャモはいなくなっているのかも知れない。こんなに不漁だという中、鵡川での人工孵化放流用のシシャモの卵は採れているのだろうか…?
せたな町の秋サケ、昨年に引き続き漁獲好調1.8倍。
北海道南部の日本海側ひやま漁業協同組合管内のせたな町では、昨年に続き、今年も秋サケの漁獲は好調という。漁期途中ながら、昨年の1.8倍と報道された。

地球温暖化の影響で秋サケの来遊数が減少し、漁獲が低迷していると専門家が解説している中、せたな町では2019年、2020年、2021年と連続で右肩上がりで増加し、2022年の今季は途中経過ながら、昨年の1.8倍と好調だ。
ひやま漁業協同組合は「せたな町・八雲町・乙部町・上ノ国町」の各漁協(支部)で構成されているが、驚くことに全量の8割が、せたな町での漁獲なのである。
何故、せたな町だけで漁獲量が多いのか?
せたな町が他町と違う点は、せたな町の2河川で、2010年から治山ダムと砂防ダムのスリット化を行ってきたことである。



治山・砂防ダムのスリット化で砂利が流れ出し、河床低下が緩和され、川岸の崩壊のリスクが減少した。つまり、ダムの影響が取り除かれて、酷い泥水が抑止、低減されたのである。
サケ稚魚は酷い泥水の中で生きてはいけない。ふ化場の池に泥水が流れ込むと、サケ稚魚は壊滅的な被害を受けることからも、お分かりいただけるだろう。泥水が流れ続けているような河川では、放流サケ稚魚も自然産卵由来のサケ稚魚も、人知れず、多くが命を落としている。つまりは、生残率が低下しているので、サケの漁獲が減少するのである。
ダムのスリット化後、年々、川底に堆積している砂が粗めの砂礫に変わり、石と石のすき間ができ、川底を水が通り抜ける透水性が回復している。こうなれば、魚の繁殖できる場所がどんどん増えていく。益々、自然産卵するサケやサクラマスが増加していくことだろう。せたな町では秋サケ以外にも、サクラマスの漁獲が2021年、2022年と好調という。これは、繁殖環境の回復を示唆していることに違いない。その上、河口周辺の海域では、背丈の高いワカメが林のように繁茂するようになり、岩のりが採れるようになり、ウニが大型に育ち、数もたくさん採れるようになった。これはシルトや微細砂の酷い泥水が低減され、粗い砂礫に代わり、海藻の胞子が育つようになってきたからだ。粗い砂礫が岩礁を洗い、海藻の胞子が付着し易くなったり、岩礁の表面を覆っていたシルトや微細砂が無くなり、胞子が発芽しやすくなったためと考えられる。
一方、治山・砂防ダムの影響で、川底が下がり、川岸が崩れ、災害が多発するなど、相変わらず酷い泥水が流れ続けている太平洋側八雲町の遊楽部川では、本流、支流共に自然産卵するサケが殆ど見られなくなっている。自然産卵するサケがいないことは、ホッチャレサケを食べに飛来するオオワシ・オジロワシが激減していることからも明らかである。

春先、遊楽部川はこんな酷い泥水が流れている。この泥水に孵化場は、サケ稚魚を放流しているのである。泥水の中に放り込まれたサケ稚魚たちは、口からシルト分や微細な砂粒を吸い込んで、繊細なエラ組織を通して吐き出し、エラ呼吸している。繊細なエラ組織を傷つけ、エラ組織のすき間に付着したらどうなるかなど、サケ稚魚の身を案じもしない。孵化事業とは、命を紡ぐ仕事でもあるのではないのか。
こうした酷い泥水を発生させるダムの影響は、深刻なものなのである。
この現実に、サケ専門家たちは言及せず、サケ資源が減少したのは、「地球温暖化で海水温が上昇したからだ」とか、「海流の流れが変わったからだ」とか、はたまた、「北太平洋のどこかで異変が起きており、そこで若いサケが死んでいるのではないか」などと、もっぱら海洋での異変について解説している。しかし、現場を見れば、川から海へ降海する前の段階、つまり、川にいる段階で生残率が低下しているのが真実ではないのか。海洋異変の話に転嫁する前に、まずはサケとはどんな魚なのか、基本的知識に立ち返り、ご自分の足で現場に出向き、再生産の場である川をしっかりと観察され検証し、恥ずかしくない解説をしていただきたいものだ。
北海道南部太平洋側へ注ぐ八雲町の遊楽部川は大雨で増水した
8月15日から16日にかけて、北海道南部の八雲町では久しぶりのまとまった雨が降り、遊楽部川は増水した。
8月15日14:00~8月16日16:00にかけての雨量は八雲町八雲で164㎜と発表された。16日は、早朝から携帯や町内アナウンスで避難勧告の騒ぎ。遊楽部川の堤防が決壊すれば我が家は水没、流される。家が流されるかも…と、覚悟はしたが、断続的に激しい雨が降る中、まずは、遊楽部川の水位を確認することにした。








市街地を抜けて、少し上流へ行った。上流に旧道の橋があるが、なんと、流木が引っかかって、橋脚基礎部の河床が洗掘され、橋脚が沈み込んでいた。
上流の治山ダム・砂防ダムが砂利を止めているので、下流一帯では、河床の砂利が流され、河床低下が進行。砂利で埋まっていた橋脚の基礎が剥き出しになり、そして、流木によってさらに洗掘されて被災したというわけだ。
治山ダム・砂防ダム ⇒ 河床低下 ⇒ 橋の基礎が根上がり ⇒ 橋の上流では河床低下で川岸が崩壊し、立木もろとも流れ出した ⇒ この流木が橋脚に引っかかった ⇒ 橋脚基礎を洗掘 ⇒ 橋脚が沈み込んで、被災した。まさに、自作自演の災害だ。



8月16日、この日、幸いに雨が小降りになり、その後雨が止んだ。堤防天端まで2mほどを残して、水位の上昇は止まった。
さて、酷い泥水、根っこ付き流木がホタテ養殖場である噴火湾に流れ込んだ。養殖施設に被害が及ぶばかりか、酷い泥水でホタテの斃死も発生したことだろう。
河川管理のあり方を、本気で考えてほしいものだ。
また、専門家という人たちは、真摯に現場に向き合い、当たり前の科学を全うしていただきたいものだ。エセと保身が多すぎる。科学とは現場に返すものだ。
真っ当な科学がされない背景には、増水後を見ればよく分かる。




被災した後、災害申請すれば、災害補修事業が創出される。つまりは、地元に国や北海道から、お金を取り込めるというわけだ。まさに、大雨を待っていれば、労無くして、お金が手に入る…これが地方の現実…。科学が口出し出来ないのはこのためかも知れない。
こうして、何もしなくても湧くようにたくさんいた遊楽部川のシシャモ資源が失われ、キュウリウオやアユを無くし、サケやサクラマスまでもいなくしてきているのだ。
そして、挙げ句は、北海道新幹線のトンネル工事で掘り出される、溶出量が国の環境基準を遙かに超える有害重金属含有の膨大な量の残土のゴミ捨て場にされている。なさけないものだ。なんとかしたいのだが…。
オンラインシンポジウム:未来の交通インフラが環境破壊!? ~リニア・北海道新幹線・北陸新幹線の現場から~
気候危機、生物多様性の喪失、頻発する自然災害等に直面する今日、持続可能な社会を実現させるための抜本的な社会経済システムの転換が急がれます。交通体系もまた、都市計画や地域づくりと密接に関係しており、環境社会への配慮や誰もが安心・安全に移動できることが求められます。しかしながら、現在、政府が進める「未来の交通」とは、数十年も前に経済成長のみを優先して計画された環境破壊や地域社会の分断を招くような大型開発事業ばかりです。
今回のオンラインシンポジウムでは、リニア中央新幹線、北海道新幹線、北陸新幹線の開発影響の事例から、政府や地方行政が進める未来の交通インフラの問題を明らかにしていくことで、私たちが未来に求める移動のあり方について考えます。
【日時】 2022年6月27日(月)19:00~21:30
【開催方法】 オンライン会議システム zoomを利用
【参加費】 無料
【申込み】 登録は以下のフォームから(自動的に参加可能なリンクが送られます)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_BH-s2OTaSOawT513pGNfGw
<プログラム>
1.「リニア中央新幹線計画」は「未来の交通インフラ」と成りえるのか? 建部 由美子 氏(リニア新幹線を考える相模原連絡会)
2.北海道新幹線延伸の問題(仮) 稗田 一俊 氏 (フリーカメラマン/流域の自然を考えるネットワーク)
3.恐ろしく杜撰な北陸新幹線延伸計画 長野 宇規 氏(田歌区北陸新幹線問題対策委員長、神戸大学農学研究科准教授)
4.問題整理 樫田 秀樹 氏(ジャーナリスト)
5.パネルディスカッション(コーディネーター:樫田 秀樹 氏)
6.質疑応答
※当日のプログラム内容は一部変更になる場合もございます。
【主催・問合せ】 国際環境NGO FoE Japan( https://foejapan.org/contact/)
トンネルで出水!日本最長32㎞「渡島トンネル」工事現場
北海道新幹線札幌へ延伸工事中の日本最長32kmの「渡島トンネル」北斗市側の「台場山工区」で、2022年3月17日から大量の湧水と土砂がトンネル内に流れ込み、工事を一時中断。工事再開の見通しは立っていない。
発生したのは17日で、公表されたのは22日。報道は23日である。

下記の「Response.」さんのwebには現場の写真が添えられ、さらに詳しく掲載されている。https://news.yahoo.co.jp/articles/3135baed05c597f142c6af2320a1190e75de8764
川は、橋で渡るものだと思っている人が多いだろうが、この土砂流入区間は新幹線を、2級河川・大野川の下を走らせる工事だ。当初は、北斗駅から村山トンネルを抜けて、大野川を橋で渡ってから渡島トンネルに入る計画だったが、急遽、村山から直にトンネルを掘り下げ、大野川の地下50mほどのところを通り抜ける日本一長大な「渡島トンネル」に変更された。そのトンネルに湧水が流れ込んだのであれば、大野川本川からの出水も否定できない。小沢からの出水であれば、小沢の水が涸れる可能性もあり得る。



こうしたトンネル工事では、水脈を切ることが度々発生する。東北新幹線工事では宮城県二本松で集落の水源が涸れている。九州新幹線工事では田畑の水源の水が涸れた。本州の屋台骨をくり抜くリニア新幹線トンネル工事では富士川の水量への影響が懸念され、議論が続いている。
危惧するのは、工事現場で発生している不都合な情報の公表が遅れたり、隠蔽されることだ。北海道新幹線の工事主体である独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、極めて不誠実な組織である。北斗市では溶出量が国の基準を270倍も超えるヒ素含有の有害なトンネル工事掘削土の存在を2年間も地元議会に報告せず、八雲町では、溶出量が国の基準の130倍超えのヒ素含有土を掘り出していながら、機構と役場が結託して、地元町議会には溶出量が国の基準の14倍のヒ素含有土であると、虚偽資料を提出している。いかに機構が地方行政を軽視しているかが伺える。不都合な真実は教えない、知らせない。嘘も平気のへのかっぱである。
この真っ黒な紙は、八雲町役場所蔵の公文書を開示請求した町民に対し、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構が、役場に黒塗り開示にするように指示した公文書である。

2004年の中越地震では上越新幹線で10両編成車両のうち8両(80%)が脱線、2022年3月16日の震度6強の地震では、東北新幹線で17両編成車両のうち16両(94%)が脱線。しかし、北海道新幹線は、これまでと訳が違う「もぐら新幹線」である。日本最長32kmの「渡島トンネル」内で脱線したらどうなるのだろう…?火災が重なったら…?出水したら…?厳冬期に山間部豪雪の中、脱出した乗客の生命は…?その日本最長のトンネル工事を担っている機構が、こんな真っ黒な闇体質なのかとわかると、一層不安だらけにさせられる。
北海道新幹線のトンネルの途中には水脈は勿論、活断層もある。それをトンネルでぶち抜いているわけだが、地層を動かす「地球の力」に耐えられるのだろうか?工事沿線の環境汚染ばかりか、乗客の安全の担保も危ぶまれてならない。そんなことより、何が何でも一刻も早く札幌まで北海道新幹線を開通させることだけにご邁進のようだ。機構の「節穴」で掘られる穴で…だ。


