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「農業を守る!」住民が猛反対

2019年2月19日に八雲町落部地区で、落部川上流域の未利用農地へ新幹線トンネル工事による有害重金属含有掘削土を投棄する計画について、鉄道運輸機構から住民説明会が行われた。

住民は、機構に対して「有害な重金属の汚染土を投棄する計画についての説明は不要」「調査をしようがしまいが絶対に受け入れない」と、猛反対をした。

通常なら、事業者が「調査してみなければ分からない」と説明した上で、住民側が反対しにくい雰囲気をつくり出し、つい調査を受入れる方向になってしまう。ここをよく考えてほしい。調査にはお金がかかる。事業者がダメな調査にムダにお金をかける訳がない。つまり、押しきるための調査にしか過ぎないのである。かつて、リゾート開発事業全盛の頃、環境アセスメント(環境影響評価)調査は事業実施のための「合わせすメント」と揶揄されたことは名高い。「調査しようがしまいが絶対に受け入れない」という声は、地元を必死に守ろうとする住民の心の叫びだ。住民が声を上げなければ地元は将来に取り返しがつかない禍根を残す羽目になる。地域の良さを失いかねない。地元を守るのは住民にしか出来ない。落部地区の住民はそれを貫いたのだ。

落部川流域の有害重金属含有掘削土を投棄しようとする場所は、以下に示した道立地下資源調査所が作成した八雲町の地質・地層図によると、地層は礫質や砂岩質である。地中の地層は亀裂あり、ズレあり、曲がりあり、盛り上がりあり、窪みあり、複雑な形で存在していると思った方がよい。

釜別林道沿いの赤点線の円内付近が投棄計画場所。銀婚湯の近付近。出典:八雲町の地層図・道立地下資源調査所
出典:八雲町の地層図・道立地下資源調査所

一方で機構が住民説明会で配布した資料は、地中の地層が均一になっている以下のようなお粗末な絵だ。地熱発電事業者でさえ、「地中のことは一寸先は闇だ」とこぼしているし、道立地下資源調査所の職員も、井戸に塩を入れて地下水の動向を調べたが、わずか1m離れたところでも検出されず、地下水の流れは不明と言っている。即ち、こんな絵に惑わされてはいけない。

住民説明会で配られた資料。出典:住民説明会資料・独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構北海道新幹線建設局

落部川は、周辺から浸み流れ出した水を集め、流域の田畑を潤し農業が営まれている。そして、カキやホタテ養殖が行われている漁場である噴火湾へと注いでいる。農水産業は八雲町の基幹産業だ。八雲町の基幹産業を守り育てるのは八雲町役場の仕事ではないのか。国策の北海道新幹線札幌延伸工事に惑わされて、役場としてやるべき理念をどこかに置き忘れてしまったのではないか。国は住民を見ていない、ましてや助けてもくれない。自分たちで自分たちの暮らしを守り、地域を守るしかないのだ。

以下の北海道新聞記事は、この落部地区の住民説明会の顛末が報道されている。

出典:2019年2月21日朝刊(地方版)・北海道新聞

 

出典:2019年3月14日朝刊(地方版)・北海道新聞

 

 

 

 

何故、こんな配管をするのか?

立岩工区での排水の為に新設された配管は、全く不可解である。

これまで立岩工区の排水は、国道277号線の側溝に流して遊楽部川へ出しているのだが、機構は排水量を増やす計画で写真のように配管を敷設した。わざわざ遠く離れた支流へ山を越えてまで配管を延ばす必要があるのだろうか?しかも、サクラマス幼魚が越冬する支流にだ。生物多様性保全・自然資源を損なわないように、プラント現場から国道277号線の下を潜らせて遊楽部川へ排水する私たちの提案は何故、受け入れられないのだろうか?

トンネル工事現場の立岩工区から遊楽部川へ配管すれば良いだろうに…。2本の鋼管を山の上に配置し、その先の農地を掘り起こし鋼管を埋めて、町道の下を潜らせて支流まで引っ張るという遠い道のりだ。
立岩工区から山の方へ延びる2本の配管。わざわざ山越えさせる理由がわからない。

鋼管を山に上げてしまうと、排水にはポンプが必要になるばかりか、農地を掘り起こして鋼管2本を埋設しアスファルト舗装の道路の下を潜らせる大がかりな工事だ。使われる大量の鋼管にも費用が膨らむのは誰が見ても分かる。

排水を遠くの支流河川に送るための2本の配管。山越えさせている。
2本の配管は農地を掘り返して埋められ、アスファルト舗装の町道下を潜らせて、その先の小さな川に…。
立岩工区から遠くの小川まで配管する資材は、大量に必要になる。私たちの税金が、必要性のよく分からないこうした工事で使用されている。
町道の下を潜らせて、小川まで配管している。
立岩工区から遠く離れたこの小さな川に、PAC処理後の排水が流される。この川には多くのスジエビが生息し、小さな淵がいくつもあり、それぞれの淵には越冬に集まっているサクラマス幼魚(ヤマメ)が50尾前後身を寄せ合っている。多様な生物が生息している良好な川に、PAC処理後の排水をするのだから、影響は大きいことは間違いない。PAC:注(凝集剤)は、神経毒など生物に与える影響が懸念されていることから大手の建設会社は使用を止めている。しかし、PACは安価であり北海道では常用されている。                                                             注:【濁水処理にはPAC(ポリ塩化アルミニウム)と発がん性のある有機系凝集剤と共に使用される。神経毒、蓄積毒であるアクリルアミドのモノマーは魚のエラに吸着する。ヒメダカは48時間で50%が死亡、粉末凝集剤では100%死亡するという毒性が認められているものだ。プランクトンであるミジンコでは、100%が遊泳阻害を受けることも解っている。噴火湾に注ぐ川にはサケやサクラマスが遡上している。川底に産み落とされた卵、ふ化したばかりの稚魚はメダカ以上に影響を受ける可能性がある。しかし、トンネル掘削工事の濁水処理に添加されるPAC凝集剤の8年にも及び使用し続けることによる影響については、鉄道・運輸機構も建設会社も「わからない」と言う。噴火湾は沖合5,000mまでホタテのケタを吊り下げた大養殖場でもある。ホタテの子どもはプランクトンである。ホタテが食べる餌もプランクトンである。そのホタテは北海道の大事な産業であり、学校給食の献立にも推奨されている。神経毒、蓄積毒、発がん性があるPAC凝集剤を長期使用することに、北海道は黙っているのだろうか?どうしても解せないのが、なぜ、このPAC凝集剤を使用しなければならないのかだ。本州では、既に大手建設会社は環境保全・生態系保全の観点からダムやトンネル工事で使用してきた有機系凝集剤を、現在では天然素材に転換している。しかし、北海道でトンネル工事に着手している建設会社は、「コストがかかる」「既に薬剤を購入している」「作業効率が悪い」という理由で代替はしないと結論している。そして、鉄道・運輸機構は、「環境基準を満たしていれば、咎めない」と言う。有機系凝集剤の環境基準値は「国交省」と「環境省」が設定しているが、基準値の甘い方の「環境省」基準に基づいている】
2018年12月16日に大学教授の指導の下、私たちが行った調査。ちょっとすくってみただけで、こんなにもたくさんの魚が採れた。この川にはサクラマス幼魚がたくさん集まっていた。如何に、この小さな川を越冬に利用しているかが伺える。他に多くのスジエビ、ウグイ、ウキゴリが生息していた。特にサクラマス資源は激減している状況にあるので、このように多様性ある川は、北海道として生物多様性保全条例を適用し、機構に対して資源の保護・保全を訴え、排水の見直しを指導するべきである。
調査後には全員無事に元の川に戻しました。
2本の送水管から、こんな水量の極僅かな小さな川にPAC処理水が排水される。国が掲げる生物多様性保全戦略は、現場では全く機能していない。身を寄せ合って厳冬を生き抜いているたくさんのサクラマス幼魚やスジエビたちに影響が無いハズは無い。PAC処理水の排水は見直すべきだ。

国道管理者・函館開発建設部八雲道路維持事務所と側溝への「排水の増量」について協議したという。だが、側溝の容量が足りないため断られたという。しかし、国道管理者とは国道の下をくぐらせる「配管案」について協議していないことが分かっている。

立岩工区の脇は国道277号線があり、その傍に遊楽部川が流れている。既設の側溝の排水は、国道下を潜って遊楽部川へ流されている。

機構は、「今までの側溝の利用が出来なくなったので、山を越えさせて遠くの川まで配管することになった」と説明する。本当にそうなのだろうか…?。

国道脇の既設の側溝に集められた水はこの排水溝から遊楽部川へ排水されている。
遊楽部川への排水口には「逆止弁」が取り付けられている。

落合洋則課長補佐は「既設の排水溝には”逆止弁”があり、遊楽部川が増水した場合、逆流しない仕組みになっている。増水時にはPAC処理水の排水ができない」と説明する。これはおかしな説明だ。国道下をくぐらせる配管には逆止弁は不要である。何故なら、立岩工区内の濁水処理施設は濁水を高い位置(水槽)まで押し上げてPAC処理し、この高低差を利用して排水しているからである。これは内水氾濫防止用に設けられた揚水場(ポンプ場)と同じ仕組みと言える。つまり、遊楽部川が増水しても排水は可能ということになる。それでも排水できないと言うのであれば、送水用のポンプを取り付ければ良いことである。機構の説明は意味不明で、不可解である。

小さな川への排水についても、「サクラマスの産卵が終わったころに調査を予定していたので、10月30日に実施した」と言う。しかし、樋口所長は「(10月19日の問い合わせの時点で)指摘を受けて現在魚類調査を行っている。都市のどぶ川と同じ認識でいたので魚がいるという認識はなかった」と説明している。そもそも、既に配管が終わってからの調査、サクラマスの産卵が終わってからする調査とは、いったい何を目的にしたものだったのか?国民の税金を使った調査なのだから、専門家の指導を受けて行わなければならない筈だ。この不可解な工事は、税金の使途としても問題だと思う。当該工事に関わる一切の開示請求に必要な文書名(工事名)の再三にわたる請求にも、今だに返事はない。このような経緯を2019年2月19日に独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構及び国に告げ、指導を求めたところ、2019年3月1日に以下(大略)のように国土交通省と機構コンプライアンス担当から回答があった。

国土交通省鉄道局施設課「北海道新幹線新函館北斗・札幌間の事業では詳細な構造及び施工計画の検討に際し、専門家等の意見を踏まえ、必要とされる調査を実施し、生息・生育環境に対する影響が最小限になるように適切な保全策を講じるよう機構に意見をしている。また、事業費管理では、関係機関等との協議や現地状況等を踏まえ、事業費管理を徹底するように機構を指導する国土交通省としては事業の推進にあたっては、地域住民の方等に、工事実施に関する情報提供を十分に行い、理解を得るよう最善の努力を行うよう、機構を指導している

独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構コンプライアンス窓口当機構では、北海道新幹線の建設にあたり、様々な形で地域住民の方等へのご説明や意見交換等を行っており、今後とも丁寧な対応を行うよう努めてまいります」

しかし、こんなご丁寧な回答だけを頂戴したところで、現在においても現場の八雲建設所の樋口哲哉所長及び落合洋則課長補佐からは、回答も無ければ説明も無い。サクラマス幼魚の越冬河川への排水に関わる扱いがどうなるのかすら解らないままである。

 

 

 

サクラマス幼魚の越冬河川に汚染水。

北海道新幹線トンネル工事によるPAC処理後の有害重金属を含む水を、サクラマス幼魚が越冬する小さな川に排水する計画について、私たちは事業担当者に見直しを求めており、2018年12月26日に札幌工事第三課課長補佐・落合洋則氏と、八雲建設所長の樋口哲哉氏ほか数名の職員と面談することになった。

サクラマス幼魚の越冬河川にPAC処理排水管は既に敷設されていた。撮影:2018年10月17日

これまで真摯に対応されてきた担当者が転勤された後、機構の対応はガラリと変わり、報道関係者の同席を毎回拒否し、求める資料を示すこともなく面談の度に、「問題は無い」を繰り返すだけで実に不誠実な対応しかない。

前任の浦川所長は、環境負荷を軽減するために出来ることは配慮を実践し、住民や環境団体、議員や報道関係者に至るまで、嫌な顔一つせず具体的な資料を揃えて、厭わず実に丁寧な対応をされてきた。ところが、人事が変わるだけでこうも簡単に環境が危うくなる…現場人の裁量次第だということを思い知らされる。

それどころか、この侮蔑な対応しかしない樋口所長と落合課長補佐は、面談とは関係の無い話題を持ち出し、我々のホームページに発言の責任の所在として名前を表記したことについて、名前の公表は「人の命に関わる問題がある」と切り出した。「人の命は何よりも重たい」と言う。全く理解できず、意味不明だ。独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は現場の職員の命を危険にさらすような説明を住民にするように強要しているのだろうか?呆れた話である。国税を使った事業についての説明に、その説明の責任の所在を表記することがなぜ命に関わることなのか…? (国は「誰と話したのか?担当者の名前もわからないような相手と話したのか?」と言うから、表記したまでだ)莫大な血税を使用した北海道新幹線だが、地域貢献を一つの目標に掲げているのであれば、地域の基幹産業を損ない、住民生活や住民の生命を脅かすことがあってはならない筈だとこちらが言いたくなる。見直しや改善を求めて、面談を申し入れているのである。その面談を公表することが職員の命に関わるとはいったいどういうことなのだろうか…?独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、落合洋則課長補佐が命の危機にさらされているというのだから、現場を適切に指導すべきではないだろうか。

くような内容で、貶める粉飾文言を交えたメールが届いた。以下(青字)は、当会「流域の自然を考えるネットワーク」の問い合わせメールに届いた機構職員の実際の文言である。

八雲建設所 樋口です。ご質問いただいた件に関して下記のとおり回答致します。

当方が専門家へ環境調査結果やその結果を踏まえた対処などについて説明を行う際、調査や対処に関することのほか、当該調査に関して関係機関や住民の方からの意見や提言がある場合は、必要に応じてそのことも含めて説明し、意見を聞くことがあります。環境調査結果やその結果を踏まえた対処について、専門家と打合せを行う一環で説明を行っていることであり、その内容を公表するものではなく、個人情報や守秘義務に関して問題となることではありません。

宮崎氏と稗田氏がネット上に弊社職員の氏名や所属部署を記載したことについて、そのことによる計り知れない悪影響や不測の事態を引き起こすおそれがあることを伝えたが、被害妄想、自業自得と言語道断で理不尽な発言を行った。さらに他の弊社職員の氏名をネット上に記載すると平然と発言した。計り知れない悪影響や取り返しがつかない事態が引き起こすおそれがあるにも関わらず、しかも、笑いながら、人を陥れようとしていると思われる発言を行うこと自体、恫喝の何物でもない卑劣な行為。

自分の名前を他の方に言われるとなると、保身なのか身勝手なのかわからないが、個人情報守れとか、守秘義務違反だと言う。甚だ矛盾している。しかしながら、当方は他の方に悪影響や不測の事態を引き起こすおそれがあると考えられることは行いません。上記の回答に対して弊社に質問された場合、弊社が回答しても堂々巡りになると判断したら、回答を行わないことを含み置きください。

機構は私たちの指摘を受けて10月30日に調査を行ったという。「魚影は薄く、ヤマメ(サクラマス幼魚)は数尾」で、すでに、漁業関係者及び魚類等に関する専門家に説明し、排水が認められたという。排水先に生息する魚類について助言した専門家が誰であるのか尋ねると、個人情報なので教えられないという一方で、「専門家は、あんたの名前を知っていた」と答えたのだ。明らかな矛盾である。

サクラマス幼魚を多数観察していた私たちは、この調査に疑問を持ち、12月16日に魚類調査を行った。その結果、機構のデータと大きく異なり、50尾前後のサクラマス幼魚の越冬集団を確認することができた。本来なら、縄張りを持ち分散して生息しているのに、冬場に水量の少ない小さな川淵にサクラマス幼魚が50尾いる事実は、越冬河川であることを示していることを説明した。すると、落合課長補佐は「違法な漁具を使用したのではないのか」と、揚げ足取りをする呆れた始末。機構の調査方法は「目視」だ。排水の温度は11~18℃、水位は10cm上昇し、水温は4℃上昇すると言う。排水先の川の水温・水量の季節変動を含め、説明を裏付けるデータや資料の提示は無い。開示請求の問い合わせにも今だ無視である。

撮影:2018年12月16日・田中邦明氏

サクラマス資源は今や希少種になるほどに激減している。そのサクラマス幼魚が越冬している河川を保全するために、当河川への排水は避けるように、私たちは2つの代案を提案した。最善は立岩工区から国道の下をくぐらせて遊楽部川本流へ排水する案。もう一つは、サクラマス幼魚の越冬河川への排水管をさらに延長させて、コンクリートブロックが敷設された堤防から排水する案である。

今、八雲町遊楽部川はダムの影響で河床低下が進行しており、地下水の水位が低下して、冬でも凍らない細流が失われつつある。即ち、サクラマス幼魚が越冬できる場所が無くなってきている。機構が重金属汚染水を排水しようとしているサクラマス幼魚の越冬河川は非常に貴重な場なのである。この事実を漁業関係者や魚類専門家に伝えなければ、「排水が認められた」という機構側の解釈だけで判断を誤ることになる。私たちは再調査と、この川への排水の見直しを求めている。

サクラマス資源保護・保全のために、越冬河川を失うような事業は避けてほしいと願うばかりである。

 

 

 

良瑠石川のスリット化は…効果絶大!

2019年1月18日、ひやま漁協の漁師と釣り人、住民で結成された「せたな町の豊かな海と川を取り戻す会」の総会が、せたな町で開催された。道・町議会議員、桧山振興局、函館建設管理部今金町出張所、せたな町役場の職員が出席した。

総会の代表から「須築川砂防ダムの魚道改築の要望に対し、「流域の自然を考えるネットワーク」の宮崎代表から、魚道の改築ではサクラマス資源の回復は見込めないと指摘があり、魚道改築ではなくスリット化を求めることになった。その結果、良瑠石川の4基の治山ダムでもスリット化が実現し、管内のサケ定置網8ヶ統ある中、一番悪い漁場だった良瑠石川地区の2ヶ統が、2015年から昨年に至るまでの4年間、管内で漁獲量が1~2位になった」と報告があった。

2011年2月22日には良瑠石川の本流の下の治山ダムのスリット化工事が行われた。

2011年2月に本流下の治山ダムがスリット化されたので、この年の秋にはサクラマスとサケの産卵場が大幅に拡大した。その後、2012年3月までに全4基の治山ダムがスリット化された。従って、2011年の秋に産み落とされたサケの子どもたちは翌春、海に下り、四年後の2015年に大きく育ったサケたちがこの川に戻って来たわけだ。このサケたちが良瑠石川地区のサケ定置網で漁獲されて、漁獲増をもたらしたと言える。

2017年9月13日良瑠石川を視察。サケがそ上していた。

2017年9月13日、良瑠石川本流のスリット化した下の治山ダムの魚道を上るサケのペア。

スリット化された治山ダムの上流へ上ってきたサケ。右の円内は産卵行動中のサケ。

本流のスリット化された上の治山ダム・逆台形型のスリット化は流木が挟まることもないので、メンテナンスフリーだ。スリット化後、川は上流と下流の川石の大きさが同じになり、川が蘇ったことがよく分かる。これが逆台形型のスリット化の効果だ。

当初、治山ダムの管理者である道林務課は、ダムをスリット化すれば、「土砂・流木が流れ出し、橋が壊され、その先の集落が陸の孤島になる」として、スリット化に難色を示していた。しかし、スリット化してみれば、災害を引き起こすような土砂も流木も流れ出すことはなかった。むしろスリット化で川は蘇えり、その効果は期待以上のもので、総会では、沿岸の海藻の育ちが良くなったことが報告された。良質のコンブ・ワカメが採れるようになり、ウニが大型に育つようになったとも言う。ダムのスリット化で海藻が育つようになれば、磯焼けも解消され、やがてはニシンの群来も見られるようになることだろう。

土石流と流木が押し寄せて壊れると説明されていた橋は何らの被害もなく、健在。河床はきれいな砂利で覆われ、多くの魚の繁殖に適した河床に蘇った。

橋の下流はすぐに日本海だ。

橋をくぐればそこは日本海だ。泥水が出なくなれば、海藻の育ちもよくなる。

良瑠石川が注ぐ日本海。泥の流れ出しが減少すれば海藻が蘇る。

良瑠石川の河口。撮影:2018年11月8日。

良瑠石川の河口。撮影:2018年11月8日。

良瑠石川河口。海中の黒く見えるのはコンブにワカメ、ホンダワラなどの海藻だ。

全道でサケの漁獲が減少している最中に、サケの漁獲を増加させ、沿岸海藻の育ちが良くなり、ウニを大型に成長させるというスリット化の効用を目の当たりにした漁師たちの総会は、漁業復活の明るい兆しが見えたダムのスリット化に盛り上がり、熱気に沸いた。

 

 

写真展の開催お知らせ

パタゴニア 札幌南店に於いて、当会の活動記録「漁師と釣り人と活動家たちが川を蘇らせる~ダム撤去までの道のり」と題した写真展を2018年12月3日~30日まで開催中です。店内に展示された写真についてパタゴニア・スタッフさんたちが解説してくれます。是非、お立ち寄りください。

パタゴニアアウトレット札幌南ストア

URL:https://www.patagonia.jp/patagonia-sapporo-minami-japan/store_924604533.html

良瑠石川・ダムのスリットで川はどうなった?

2018年8月8日、治山ダム4基をスリットした良瑠石(ラル石)川が、その後どうなったのか?パタゴニア札幌スタッフと現地を踏査した。河川管理者は、ダムをスリット化すれば、流れ出した土砂や流木で下流の橋が被災し、その先の集落が孤立する危険があると説明していたが、本当にそうなったのか?

まず、2基の治山ダムをスリット化した支流へ入った。小さな砂利が目立つ程度で、川が荒れた痕跡は無い。巨石が挟まり合って川底を安定させていた。

2基の治山ダムのスリット化後、小さな砂利が増えてはいるが、土石流が流れ出したような痕跡は無い。

支流のスリット化した下の治山ダム。削岩機で削っただけだが、倒壊するような危険は無い。

左右の草が生えた土壁はダムの堆砂だ。ダムの堆砂の大半は、流れ出さずに残って草木が生え山と同化していた。「堆砂の全量が流れ出すから危険」という管理者の説明は根拠の無いもののようだ。

支流のスリット化した上の治山ダムが上流に見えてきた。辺りは小さな砂利が多少は増えたようだが、川が荒れたような痕跡は見られない。

スリット化した上の治山ダムの前で、パタゴニア・スタッフへスリット化の効果を説明する宮崎司代表。

支流のスリット化した上の治山ダムと上流側の堆砂。堆砂の大半が残っており、増水時に僅かに分散して流れ出し、草木が生えて地山と同化している。大規模に流れ出すとは考えられない。(川筋の左右の草が生えたところ全部がダムの堆砂)

支流の川は急峻だが、スリット化後にダムに貯まっていた堆砂の全量が流れ出すような事態にはなっていなかった。増水時に流れている堆砂の量は少なく、大半がそのままに残っていた。

次に本流へ入った。

本流のスリット化した下の治山ダム。砂利の流れが安定してきたところ、魚道が砂利の流下を阻害し始め、魚道下流で僅かだが河床が下がってきていた。魚道は不要だ。

砂利の流下が安定してきたところで、今度は魚道が砂利の流下を妨げるようになり、直下では僅かに河床が下がり始めている。魚道がある区間ではサケは産卵できない。撤去すればここにも産卵できるのだから、蘇った川には無用の長物である。

スリット化したダムの直下に魚道が見える。魚道がまるでダムのようである。今後は魚道による影響が現れてくるだろう。

本流のスリット化した上の治山ダム。上流と下流が繋がり、川は蘇った。

流木がすぐに詰まって役立たずの斬新な螺旋型魚道は、やはり役立たずのまま一生を終えた。

スリット化によって川が蘇り、資源が回復することを説明する宮崎司代表。

堤体で分断されていた河床は、スリット化で上流と下流が綺麗に繋がり、川が蘇っていた。

堤体天端まであった堆砂は、ちまちまと流れ出しており、全量が流れ出すようなことにはなっていない。削岩機で削った堤体も強度は保持したまま残されていた。

スリット化で上流と下流が一つに繋がった。

川を分断していたダムを切れば、上流と下流が繋がって本来のごくありふれた川の姿に蘇るのだ。

河川管理者は、ダムをスリット化すれば「堆砂の全量が流れ出すから危険だ」、「流木が橋を壊す」と説明していたが、橋を壊すような流木も無ければ、土砂災害を発生させるような土砂も流れてきていない。むしろ、砂利が流れるようになって川は安定し、元の自然の川に蘇っていた。

ダムのスリット化で川が蘇ったことで、サケやサクラマスの産卵域が広がり、水産資源が増大している。地元の漁師は「サケの漁獲が落ち込んでいるのに、この地区では漁獲量が増えた」と言う。そして「泥水が流れなくなったので、海藻の育ちがよく、良質なコンブが採れ、ウニが大ぶりになって実入りがよい」と言う。現場の漁師が実感しているスリット化の効果は絶大だ。この川にあった砂利の流れる仕組みが蘇るだけで、サケ・サクラマスの再生産の仕組みが復活し、沿岸の海藻も育ちがよくなり、水産資源が増大することが証明された。ダムのスリット実現まで苦悩した漁師や釣り人の功績である。この川が教えてくれることは絶大だ。

良瑠石川河口・微細な砂よりも礫が多く見られるようになった。

河口付近に打ち上げられた海藻は、泥が被らなくなったので綺麗だ。ただし、漁業権無き者は拾ってはいけない。ご注意を!

下流域は、まだダムに溜まっていた堆砂が流れているが、次第に砂利の量は減り、安定してきた。

良瑠石川の河口を望む。スリット化後に荒れた様子は見られない。

本流2基と支流2基の治山ダムをスリット化した後。川が荒れたような痕跡は無い。

 

 

 

土砂で埋まった二風谷ダム。

2018年7月4日に二風谷ダムは大雨に備えて、水位を下げるためにダム底のオリフィスゲート7門のうち5門から放流操作がされた。通称「土砂吐きゲート」と呼ばれ、深黒の泥そのものが吐き出されていた。湛水域の水位が下がったので土砂で埋まった二風谷ダムの全容が見えた。

撮影:2018年7月4日

堤体の直近まで土砂で埋まっているのが分かる。撮影:2018年7月4日

堤体の直近まで土砂で埋まっている。撮影:2018年7月4日

流木止工のロープも土砂の上に乗っかっているような状態だ。泥に埋まった流木が水面から出ている。撮影:2018年7月4日

オリフィスゲート7門のうち5門から土砂が放流されていた。撮影:2018年7月4日

清流?あり得ない放流水の色である。撮影:2018年7月4日

「二風谷ダム定期報告書概要版・平成27年3月」の二風谷ダムの仕様図から土砂の堆積状態を照合した。

 

露出した土砂のレベルは、凡そ41.0mの位置と分かる。このレベルを二風谷ダムの仕様図に当てはめて見ると…、

水面から露出した土砂の位置は、オリフィスゲート放流口の上端の5mほど上に位置していることが分かる。ということは、オリフィスゲートはすっかり泥に埋まっているのだ。泥に埋まった放流口から放流しているのだから、出てくるのは泥ばかりという訳だ。つまり、二風谷ダムは土砂で埋まっており、オリフィスゲートの放流口付近だけが土砂に埋もれた中で溝のようになっていると推測される。下記のサイトにも二風谷ダムの状況が報告されているので参考にしてください。

URL:https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/kawa_kei/ud49g700000088o0.html

土砂で埋もれた放流口から、ダムの堆砂を定期的に吐き出しているのだから、膨大な土砂が日常的に下流へと放出されている訳だ。こんな状況では、二風谷ダムの下流域で産卵するサケやシシャモ資源が枯れるのは当然である。魚類学者や生物多様性保全戦略にかかわる委員会や行政、また、水産行政は水産資源を失うばかりのこの状況をどう判断しているのだろうか。地元漁協は補償金を得ているので声を上げられないのかも知れないが、水産資源を失っては元も子もない。損害額は毎年毎年増えて補償金を遙かに超える損害とともに、取り返しがつかない禍根を残すことになる。

清流・沙流川だったころを思い出してほしい。そして、現状を直視して記憶にある清流・沙流川と比較してほしい。二風谷ダムが冒しているこの現状に黙っていないで声を上げることが必要だ。

上記のサイトでは二風谷ダムの堆砂量(貯め込んだ土砂)は大きく増えていないという。頭打ちで、増加傾向は見られていないというが、下の写真を見ていただきたい。二風谷ダムの流入部にある管理橋とその真下にある貯砂ダムだ。貯砂ダムには階段状の魚道が付属しているが、流れてきた土砂で上流側も下流側もほぼ埋まってしまい、現在は魚道は砂利の中にある。これでも二風谷ダムの堆砂量は増えていないというのだから、不思議なことである。

二風谷ダムの流入部では沙流川・額平川共に上流へ上流へと土砂が貯まり続けている。この土砂量は二風谷ダムの堆砂量に加算されないのは何故? 撮影:2018年5月21日

二風谷ダムは堆砂容量の範囲を超え、貯砂ダムも埋まり、さらに上流へ、上流へと土砂を堆積し、貯め込み続け、V字谷を埋めて河床を押し上げ平にならしている。このように上流へ上流へと堆積していく土砂量は二風谷ダムの堆砂エリアから外れているとでもいうのだろうか?明らかに二風谷ダムの影響で上流へと堆積しているのだから、これを二風谷ダムの堆砂量に含めて然るべきである。

膨大な土砂を貯め続ける二風谷ダムの現場がそこにありながら、現場の実態と乖離した、責任逃れの自己正当化した報告書でしかない。

 

 

NHKが報道した芽室川の災害の現場…②

芽室川3号砂防えん堤の下流には、4号砂防えん堤がある。更にその先には5号砂防えん堤と、その直下に4号床固工がある。

5号砂防えん堤と堆砂状況。撮影:2018年7月3日

5号砂防えん堤の直下に右岸のコンクリート擁護壁(そで部)が補修されたばかりの4号床固工がある。撮影:2018年7月3日

4号床固工の下流は河床(川底)が掘り下がって、両岸が崩壊しているのが分かる。撮影:2018年7月3日

5号砂防えん堤の下流側での補修工事。撮影:2018年6月28日

4号床固工。倒壊した右岸側のコンクリート擁護壁(そで部:写真では対岸)が補修された。手前の魚道も被災したため補修が行われていた。撮影:2018年6月28日

4号床固工の右岸側の堤体と左岸の魚道が崩壊し、補修工事が行われていた。写真から分かるように、5号砂防えん堤の堆砂域は砂利で満杯になっている。一方、4号床固工の下流側は川底が深く掘り下がっていた。

芽室川の災害を報告した書「4.芽室川・造林沢川流域の土砂動態」には、河床の「縦侵食」と「横侵食」が示されている。つまり、流下してきた土砂の扞止効果を発揮した砂防えん堤(床固工を含む)の下流側は砂利が供給されないために、川底が深く掘り下がっていることを示している。一方、扞止した土砂を貯めた砂防えん堤(床固工を含む)の堆砂域ではV字谷が土砂で埋まって平になり、その上を澪筋が左右に蛇行して流れている。蛇行した流れは左右の川岸を侵食している。報告書に示された「縦侵食」と「横侵食」は砂防ダム(治山ダム・落差工・流路工など河川横断構造物)のある川に共通した特徴を分かりやすくまとめてある。

https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/kawa_kei/splaat00000139gd-att/splaat00000139la.pdf

出典:4.芽室川・造林沢川流域の土砂動態

砂防えん堤や床固工は「重力式ダム」と言われ、流れてきた土砂では倒壊しないように、十分な重量のコンクリートブロックを横に並べて作られている。倒壊するはずが無い4号床固工の右岸側で堤体が倒壊したというわけだ。堤体を破壊するような巨石が流れてきたわけではない。また、大量の水や流木が押し寄せても、びくともしない強固な堤体だ。しかも、巨大な5号砂防えん堤の直下にあるから、土砂・流木の負荷は軽減されている筈である。こんなにも手厚く護られ、強固な筈の4号床固工のコンクリート擁護壁(そで部)と堤体の一部が倒壊したというのだから不思議だ。

では、倒壊するにはどんな場合があるのだろうか?

どんな巨体も、足をすくわれたら転倒する。同じように、いかに強固な堤体であっても、堤体の基礎が抜かれたら、支えを失い、あえなく倒壊する。

報告書「4.芽室川・造林沢川流域の土砂動態」には、扞止機能を発揮した砂防えん堤の下流側は「縦侵食」とあるから、4号床固工の下流側は川底が掘り下がる「縦侵食」が進行していたと読める。川底が掘り下がれば、4号床固工の基礎の砂利が抜かれる。この報告書から、右岸側の堤体の倒壊は堤体の基礎が抜かれて倒壊した可能性を導き出せる。

上2枚の写真は、4号床固工からず~っと下流の写真である。高さの低い床固工(落差工)の堤体が倒壊している。床固工(落差工)の下流側の川底が縦侵食されて、河床が下がり、堤体の基礎の砂利が抜かれて倒壊したと推察される。土砂を貯めていた床固工が倒壊すれば、貯まっていた土砂は一気に下流へと流れ出す。流れ出した土砂が膨大であればあるほど下流に膨大な土砂が押し寄せる。こうしたメカニズムが危険な土砂災害を生み、ややもすれば人命・財産が失われる甚大な被害を発生させるのだ。

この現場から、危険な土砂災害発生のメカニズムが見えてくる。

 

NHKが報道した芽室川の災害の現場…①

2018年7月3日、大雨に備えて災害復旧工事が中断されていた芽室川3号砂防えん堤を取材した。昨年、2017年9月1日放送のNHK「北海道クローズアップ」で、大学教授が芽室川3号砂防えん堤の直下で川底が深く堀下がった河岸に立ち、「川底に堆積していた土砂が大雨で流されて下流で土砂災害を発生させた」と解説していたその現場だ。NHKは大学教授の説を追認するようにアニメーションを作成して解説している。

十勝の災害・現場の取材を怠り、専門家任せで真相が見えないNHK記者

芽室川3号砂防えん堤直下では災害復旧工事が行われていた。元の川底の位置に戻すのではなく、深く掘り込んだ川底の位置に合わせて周辺を大規模に掘削する工事が行われていた。撮影:2018年7月3日。

大雨に備えて、工事が中断されている現場には誰もいない。撮影:2018年7月3日。

NHKの番組映像では、芽室川3号砂防えん堤の直下の川底は、細く深く堀下がっていた。その後の災害復旧工事の現場は、川底が深く堀下がった河床レベルに合わせるように、周辺を大規模に掘削して川幅を広げ、コンクリートでガッチリ固める工事をしていた。川底が深く堀下がった堤体の下流部はダム特有の河床低下の姿だ。専門家の解説は、川底に大量に溜まっていた土砂が流されたというのだが…現場を見る限り、どこに、土砂が大量に溜まっていたのだろうかと疑問を抱く。なぜなら、川底の地層そのものが深く浸蝕されていたからである。

元々の河床(川底)はかなり上だ。写真のように水が流れているのは深く堀下がった遙か下方になっている。ここに膨大な土砂が溜まっていたというのだ。信じがたい説明だ。 撮影:2018年7月3日。

川底が堀下がった両岸には元の河床(川底)の位置を示す大小の石が堆積した地層が見えている。大小の石の層の下の地層が侵食されて深く掘り込まれている。そしてその地層の両岸が崩れ落ちたり、立木が倒れ込んでいるのだった。ドローンで上空から3号砂防えん堤の前後を調べた。

芽室川3号砂防えん堤の堆砂域は上流へ上流へと広がっており、川幅は異常なほど広く、平になっている。この平になった堆砂面を流路が左右に暴れ回って、左右両岸を浸食しているのがわかる。撮影:2018年7月3日。

手前の橋は、上流から流れてきた流木で塞がって、橋の取り付け部が流されたと思われる。この橋の下流に災害復旧工事中の芽室川3号砂防えん堤が見える。さらに、3号砂防えん堤の下流は流路が狭まっているのがよく分かる。川底が深く侵食されていると分かる。撮影:2018年7月3日。

休工中の芽室川3号砂防えん堤の災害復旧工事現場。撮影:2018年7月3日。

芽室川3号砂防えん堤直下では川底が細く堀下がっているのが分かる。また、左右両岸を大規模に掘削して、掘り下げている様子もよく分かる。撮影:2018年7月3日。

芽室川3号砂防えん堤の上流では膨大な堆砂が溜まっており、上流へ上流へとさらに溜まり続け、川幅が平に広がり、平になった堆砂面を流路(澪筋)が左右に蛇行しているのが見られた。流路(澪筋)がぶつかった川岸がそれぞれに浸食されている。こうして、この3号砂防えん堤の堆砂域で発生した土砂や流木が橋に押し寄せて、橋の間口を塞ぎ、流水が橋の取り付け部へ流れ出し、橋の取り付け部の道路を流したと思われる。一方、堤体にも流木や土砂が大量に押し寄せているが、堆砂域の立木に土砂や流木が止められ、堆積している。つまり、上流から流れてきた土砂と流木は、えん堤の堆砂域で大半が止まり、堤体から下流へ流れ出した土砂・流木はそう多くは無かったことを物語っている。その証拠が堤体直下から見られる「川底が(侵食されて)深く堀下がった姿」だ。即ち、3号砂防えん堤の下流側に大量の土砂が堆積していたとは考えられない。仮に3号砂防えん堤から膨大な土砂が流れ下ったとすれば、堤体の下流側は土砂で埋まっていなければならないからだ。

3号砂防えん堤のずっと上流には堤高3mの2基の「床固工」があり、上流から流れてきた大量の土砂で埋まっている。

上流から流れてきた大量の土砂と流木で堤高3mの芽室川2号床固工は、埋まっている。撮影:2018年7月3日。

その更に上流には堤高3mの芽室川1号床固工があるが、ここも上流から流れてきた土砂・流木で埋まっていた。撮影:2018年7月3日。

以上のことから、上流から流れてきた土砂・流木の多くは流速が弱められる芽室川3号砂防えん堤で止められた結果、堤体の下流では土砂供給が少ないため、河床低下が急速に進み、堤体直下の叩き台や魚道の基礎が抜かれて、グシャグシャに崩壊したと思われるのだ。3号砂防えん堤の下流域へ到達したという土砂・流木は、3号砂防えん堤の下流で進行している河床低下によって両岸が崩壊した結果、そこから発生した土砂・流木が押し寄せたものと言えよう。

一方、NHK「北海道クローズアップ」の報道は、河床に大量に堆積した土砂が災害の原因としている。だから、河床に堆積した土砂が今後も流れ出すだろうから、この土砂が下流に流れてこないように、土砂を止めるダムを更に建設する必要がある…と、結論づけている。芽室川3号砂防えん堤が、河床低下を促進させ、このことが土砂・流木を発生させて災害を引き起こしたという本質とは異なるものとなっている。3号砂防えん堤前後の特徴ある状況を自らの目でしっかりと観察し、疑問を投げかけて、そこから読み解く正確な検証を行って報道をしていただきたい。

 

 

「南富良野町の水害」その後…②

空知川上流のルオマンソラプチ川。上流で被災した南富良野町串内地区の町営育成牧場へ通じる橋は補修され、すぐ上に巨大な治山ダムが建設された。その更に上流にも2基の治山ダムが建設された。

手前が補修された串内育成牧場へ通じる橋。すぐ上に治山ダムが建設された。撮影:2018年5月14日

建設された治山ダム直下に、石積みの床固工が敷設されている(円内)。撮影:2018年5月14日

建設された治山ダム直下に、「石積み床固工」が敷設された。治山ダムは砂利を止める。そのため、その下流では川底の砂利が流されて川底が下がる。石積み床固工もダムと同じ作用があるので、より一層下流の川底を掘り下げることになる。そればかりか、石積み床固工は両岸をも浸食させることは、今や常識になり誰もが知る厄介な構造物である。治山ダムだけでも川を荒廃させるというのに…川底の浸蝕を促進させ両岸をも浸蝕させる石積み床固工を、一体誰が発案し、敷設させたのか?まさか専門家の発案とは思われない。しかも、その先には補修したばかりの橋がある。わざわざ橋を再被災させる為のあり得ない改修方法である。

建設された治山ダムと石積み床固工のすぐ下流には補修されたばかりの橋がある。橋の取り付け部の基礎が岩盤に固定されていない(赤丸)。基礎の砂利が抜かれて再被災する。撮影:2018年5月14日

補修された橋と道路の取り付け部は岩盤に固定されていない。新設したダムと床固工の影響で、河床は必ず下がる。橋と道路の取り付け部は砂利が抜かれて崩落するだろう。

橋のすぐ上に治山ダムを建設したことは大きな間違いである。いくつかの橋が流木で被災したことから、流木を止めるつもりで治山ダムを建設したのなら、大きな過ちだ。治山ダム+石積み床固工で、流木は止められない。むしろ河床低下を促進させて橋を流し、川岸を崩して新たに土砂・流木を生み出すばかりで、災害を拡大させるだけである。

想定を超える増水があっても、河畔の樹林の全部が流されるわけではない。流れてきた流木を捕捉する重要な役割を担っている。撮影:2918年5月15日

流木を捕捉している。撮影:2918年5月15日

河畔林は膨大な量の流木を捕捉しており、流木を捕捉する重要な役割を担っているのがよく分かる。撮影:2018年5月15日

多くの流木を捕捉している。撮影:2918年5月15日

河畔の樹林は、洪水に耐えられなかった立木が流れ下るが、一方では写真のように混み入った樹林が、多くの流木を捕捉する。樹林が捕捉した流木は、水衝部で樹林に張り付き、やがて自然の護岸にもなる。想定を超えた増水で新たな流路ができたが、流木の捕捉能力は維持されている。むやみに治山ダムを建設しないで、川の安定化を見守り、川の復元力に任せるべきだったのではないだろうか。川の仕組みを抑え込む強引なやり方は返って災いを大きくする。

串内の下流では、写真のように岩盤で囲まれた両岸の樹林が押し流された痕跡が落合地区まで至る所で見られた。串内から下流は両岸が岩盤で狭められた回廊のようになっている。増水時にはこの区間で水位が上昇して両岸を浸食し、樹林が流されたと思われる。下流の流木被害は串内で発生した流木ではなく、串内の下流で発生した流木と考えるのが理にかなっている。どのような検証が行われたのか、知りたいところだ。しっかりとした検証がされていれば、串内の治山ダムの建設は不要だっただろう。

右から流れているのがルオマンソラプチ川。串内牧場のずっと下流のトマム川(左手から流れている)との合流点。両岸は岩盤で流路が狭められている。撮影:2018年5月19日

落合の採石場付近のルオマンソラプチ川。両岸が岩盤で囲まれ、狭い回廊となっている。撮影:2018年5月19日

串内の治山ダムは5基建設する計画だが、現在、串内牧場へ続く橋のすぐ上の治山ダムの他1号床固工、2号床固工の合計3基が建設された。

1号床固工。撮影:2018年5月14日

2号床固工。撮影:2018年5月14日

串内の町営育成牧場は森林を皆伐した牧草地となっている。その為、降雨に対する保水能力は著しく低くなっていることは言うまでもない。2016年8月16~31日の総雨量は888㎜だ。それでも、川沿いには樹林が多く残されている。幾度かの洪水の洗礼の後、流木の発生は減り、やがては落ち着く筈だっただろう…しかし、新しい治山ダム建設と樹林を伐採し川幅を広げたことで、むしろ自然の理に反して、浸食を促進させることになったことを危惧する。今後、どのように変遷していくのか、取材を続ける。