「住民を警察に突き出す」までに追い詰められた機構…!

2021年12月13日に札幌市手稲区山口で残土搬入が始まったと報道された。機構は、手稲区山口の住民には、「粉じんの飛散防止」や「粉じん泥の洗い落とし」などを説明したようだが、現場は機構の説明通りにはなっていない現実を、知っていただきたい。しかも、改善を求めるために現場に行ったところ、名指しで「**が来たら警察に通報しろ」と機構から指示が出されており、問答無用で警察に通報され突き出された。

「黒岩受入地A」は、八雲町山崎の山崎川上流の3つの小沢で、トンネル工事で掘り出した国の溶出量の環境基準16倍を超えるヒ素などの有害重金属含有残土394万を投棄し、さらに盛土する沢が追加され、33万㎥の残土投棄も始まった。4つの沢の残土量は427万㎥。膨大な量だ。砕石残土を2.5tとして計算すれば、10,675,000tになり、軽く一千万トンを超える。この現場には公衆災害の防止が掲げられていながら、搬入道路は有害重金属含有残土の粉じん泥で、ドロドロの状態になっている。

16倍ヒ素など有害重金属含有の残土の粉じん泥で町道は泥だらけ。どうするかと言えば、散水車で道路を水洗いし、道路の回りに洗い流した有害重金属含有の粉じん泥をばらまいて汚染させている。
坂道のカーブでは対向車が来たときにブレーキをかければ車はスリップして事故を起こしかねない。粉じん泥でぬかった危険な町道にした独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構をこそ警察は取り締まるべきだ。
有害重金属含有残土の粉じん泥で、町道は搬入出入口から泥だらけになっている。
出入口には交通整理をかねたガードマンが、粉じん泥落とし器の使用状況を見せないように、機構から指示されている。カメラの前に立ち塞がる。
16倍ヒ素などの有害重金属含有残土を運んできたダンプカー。出入口は泥だらけでぬかっている。
そうこうするうちに現場にJV責任者がやって来て、携帯で機構に私の名前を告げたところ、「警察に通報しろ」と指示が出され、証拠写真を撮っている。警察に突き出すためだ。
使用痕跡の無いダンプカーの「乾式・粉じん泥落とし器」。回りの雪は汚れていないし、ダンプカーの轍も無い。
JV責任者に「乾式・粉じん泥落とし器」がきれいなので使用痕跡が無いと指摘したところ、「朝に洗った」という。洗っていないことを指摘したら、「あんた、洗っているところ見たのか、見てないだろう」と切り返してきた。洗ったことが無い証拠として「きれいな雪」を指摘したら、黙った。いったんウソをつけば、ウソをつき続けなければならなくなる。機構は人をも泥まみれにさせる罪作りな組織だ。

機構は、現場の不具合を住民から教えてもらったことに感謝し、現場の状況を確認して改善に着手するのかと思いきや、そうでは無かった。改善の申し入れをするために現場を見に来た住民を、機構は、問答無用で警察に突き出したのだ。

独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、自分たちに不始末があっても、平穏に暮らしたいと願う一人の住民を公権力の警察に突き出し、前科者に仕立てあげる。改善を求める声を潰すのだから怖ろしい組織だ。

通報を受けて警察が来た。改善を求めるために現場確認に来た住民を事情聴取。相手が違うだろう…、取り締まるべきは、有害重金属含有残土の粉じん泥をまき散らして、車のスリップ事故を招きかねない状況にしている側ではないのか…

道路を有害重金属含有の粉じん泥でドロドロにぬからせ滑りやすくし、車の通行の安全をも脅かしている機構こそ取り締まるべき相手ではないのか…。警察の職務は「住民(国民)の安全・安心な暮らし、住民の生命・財産を守る」ことにあるのだから、安全・安心な暮らしを求めて訴える住民を守ってほしいものだ。

ダンプカーに付着した「湿式・粉じん泥落とし器」は十分に泥を落とし切れず、仕事を終えて近くのガソリンスタンドの洗車場で車体を洗ってから帰っている。「乾式・粉じん泥落とし器」は水洗い方式ではないので、タイヤや床面は泥だらけになる。機構に問い合わせたところ、機構・札幌局総務課は「敷地内の洗浄施設で洗浄してから帰るように指導している」と説明したが、現場ではそうはなっていない。だから、住民の監視が必要なのです。

湿式の「粉じん泥落とし器」。タイヤの内側や車の床面全部が洗浄できるのか不明。

八雲町の16倍ヒ素を含む有害重金属含有残土の粉じん泥だらけの道路は町道であり、残土搬入の沢も町が貸し付けた町有地だ。有害重金属含有残土で泥だらけの町道の改善を機構に求め、機構を指導すべきなのは「八雲町長」と八雲町役場「新幹線推進室」の役割だと思うのだが、役場の怠慢を住民が代わりに補おうとしたら、警察に突き出された。しかし、町民が逮捕されても八雲町は感知しないと言う。北斗市村山の村山残土捨て場では、5月14日、9月13日に、セレンによる地下水汚染が発生。機構の説明通りにはならず、住民の理解が得られなくなり、原因も明確に判らず、従って対策も決め手がないようで、いまだに村山への残土搬入再開のめどは立たず、トンネル掘削工事も止まったままになっている。計画通りに工事が進まず、開業が遅れる可能性が高まり、「住民の理解と協力」の元で行う事業でありながら、焦りがこうじて、その言葉すらも脳裏からすっ飛んだようで、住民を問答無用で警察に突き出すまでになっている。なりふり構わね、こうした時に事故は発生するものだ。そして、よからぬことが起きるものだ。

この「黒岩受入地A」八雲町山崎の山崎川上流の3つの小沢では、トンネル工事で掘り出した国の溶出量の環境基準を16倍超えるヒ素などの有害重金属含有残土394万を投棄し、盛土崩壊という災害が発生した熱海と同じように沢を埋め、盛土している。さらに盛土する沢が追加され、33万㎥の残土投棄も始まった。4つの沢の残土量は427万㎥。膨大な量だ。砕石残土を2.5tとして計算すれば、10,675,000tになり、軽く一千万トンを超える

沢は周辺からさらに水が集まって流れるところだ。周辺の沢水を集める集水パイプは直径20cmという。盛土の底には直径30cmの配管がされているというが、水の取り入れ口は稚拙なものだ。集水口は落ち葉・枝で塞がり泥で塞がるので、林業関係者は頭を痛めているというのに…。従ってすぐに集水口は塞がり、埋まってしまい、水が周辺に広がることだろう。地下水の汚染を確認する検査井はナシ。従って、地下水が汚染されても誰にも分からない。未来が怖い。
出典・独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構・八雲鉄道建設所重点実施項目

この黒岩受入地Aについては、八雲町と機構が取り交わした協定書がある。協定には地下水を検査する条文が記されている。だが、機構は、地下水の検査をやっていないし、やらないとしている。

八雲町黒岩地区の発生土受入に関する協定書

 

残土捨て場の配管から流れ出した水だけを調べている。出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構

鉄道建設・運輸施設整備支援機構の公表資料から、有害残土の処分に係る「自然由来重金属等掘削土対策検討委員会」名簿を下記に添える。

機構組織内に置かれ、機構が「第三者」委員会と称する「自然由来重金属等掘削土対策検討委員会」の大学教授らはいったい何者で、何をしているのだろうか。最高学府で教鞭を執り、若い学生を育てる立場にある。プライドがあるのなら、学生に対して、社会に対して、恥ずかしくないように現場をしっかりと読み解き、機構のウソを是正し、培ってきた学問と英知を発揮して議論され、機構の住民を欺くやり方に加担せず、将来に禍根を残さない万全な対策を構築して委員会として機能するように正していただきたいと願うばかりだ。

出典・独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構

機構は、2021年8月11日の八雲町議会の有害重金属含有残土の投棄場所を八雲町が買収する審議をする委員会に、捏造した資料を提出しており、審議を歪める審議妨害に相当するような事までやらかしている。町長も八雲町議会議員も、買収されているのかと疑われないよう、しっかりと現場を見て、資料を読み解き、精査してから、審議に臨み、判断をしていただきたいものだ。権力に媚びて、自分の利益誘導のための駆け引き取引していたのでは地域の住民の利益にはならない。八雲町の未来を見据えて冷静な判断をしてほしいものだ。

八雲町の財政は潤っている。あちこちの農地を町が盛んに買い、有害重金属含有残土の捨て場にしているのが現状だ。適正に処理され、管理されているのならともかく、納税者に問うことも無く、議会に諮るだけで決定し、現場は上記のような状況になっているのである。

有害重金属含有残土の投棄場所の農地は、かつては国の農業予算(税金)で住民のために整備された土地だ。1992年のリゾート反対運動の際には、牧草地が足りないとして、農業整備で必要な道路と称して、国に無断で、国の農業予算を流用してリゾート地へのアクセス道路を建設していた。このやり方に疑問を呈した住民には「農業者でもないお前達は、農業にまで口出しするのか」と役場職員が逆切れして噛みついて来たことを忘れることは出来ない。ところが、今は、農地が不要になったということなのか?八雲町は、あれほどに必要としていた農地を簡単に手放し、環境基準超えの有害重金属含有残土の捨て場にしている。情けないことだが…これが過疎化の町の悲しい現実だ。

八雲町ゆかりの作家、鶴田知也さんが八雲町に遺された言葉が遊楽部川のほとりにある。八雲町長や八雲町役場の新幹線推進室長は、この言葉を今一度、噛みしめてもらいたいものだ。

「不遜なれば未来の悉くを失う」

出典:じゃらん URL:https://www.jalan.net/kankou/spt_01346aj2200023149/

 

日本海サケ漁獲増加…川の泥を抑止で稚魚生残率向上か…

せたな町、島牧村、乙部町で、2010年から次々に砂防ダム・治山ダムのスリット化が行われてきた日本海側のサケの漁獲好調の続報だ。

出典:2021年10月29日・北海道新聞(渡島・檜山版)

 

出典:北海道水産林務部・北海道サケ定置網の漁場区分図を加工、加筆した。砂防ダム・治山ダムのスリット化した5河川の位置(青矢印)。
出典:北海道立総合研究機構・さけます・内水面水産試験場のデータをグラフ化。

日本海と太平洋側(えりも以西)のサケの漁獲量の比較。太平洋側は減少。日本海側は2019年から増加に転じている。

出典:北海道水産林務部・サケ漁獲旬報から、2016年と2021年の9月10日~10月20日までのデータをグラフ化。

5河川で砂防ダム・治山ダムのスリット化を行った日本海側南部のサケ漁獲量の変動グラフ。漁獲量が格段に増加していることを示している。

出典:北海道水産林務部・サケ漁獲旬報から、2016年と2021年の9月10日~10月20日までのデータをグラフ化。

一方、太平洋側のえりも以西の噴火湾のサケの漁獲量は減少していることが読み取れる。

全道のサケの漁獲量は減少傾向にある。

出典:北海道立総合研究機構・さけます・内水面水産試験場のデータをグラフ化。

サケ漁獲量減少の原因をサケの専門家たちは挙って、地球温暖化による海水温の上昇や海流の変動、また、北太平洋の異変などによる影響でサケ資源が減少し、漁獲量が減じていると説明している。しかし、日本海側のサケ漁獲量は増加しているのである。

ここで注目していただきたいのは、オホーツクと日本海の漁獲量だ。オホーツクでは海産のホタテは垂下式のカゴ養殖ではなく、海底に稚貝を放流する「地撒き増殖」が行われている。そのため、海底環境が損なわれないように、沿岸に泥水が流れ出さないように河川の流域環境保全が徹底されている。一方、日本海では、5河川の砂防ダム・治山ダムのスリット化後に、河口海域での海藻の育ちが良くなり、ウニが大型に育つようになったと言う声がある。つまり、泥水の流れ出しが抑止または低減されたことの証であろう。

また、泥水がサケ稚魚に与える影響を考えてみよう。

春先、自然産卵由来のサケ稚魚は浮出して泳ぎ出してくる。また、ふ化場からはサケ稚魚が放流される。そこに泥水が流れると、サケ稚魚は体から粘液を分泌して泥水から身を守る。口から吸い込んだ泥はエラから吐き出すが、エラは「鰓耙」、「鰓葉」という微細な構造をした組織から成り、この微細な組織のすき間に砂粒が入り込むとエラは傷つき炎症を起こす。ただでさえ粘液を分泌して体力を消耗している上にエラの炎症が重なれば、多くのサケ稚魚が命を落とすだろう。サケ稚魚の生残率が低下していると考えれば、そもそも回帰率云々というよりも、命育む川で何が起きているかが重要な課題なのではないだろうか。

砂防ダム・治山ダムのスリット化により泥水が抑止、低減されれば、サケ稚魚たちは体力を消耗することなく、エラの炎症もなく、丈夫なサケ稚魚として育つだろう。実際、日本海側のサケの漁獲増加は、ダムのスリット化による泥水の抑止効果でサケ稚魚の生残率が向上し、丈夫な種苗となって育った結果、回帰率が向上したのではないかと思われるのだ。(日本海側の北部、中部の漁獲増は、南部の増加した資源が途中で漁獲されたからであろう)かつて、北海道南部八雲町の北海道さけますふ化場・渡島支場長の石川嘉郎さんは、「サケの回帰率を上げるためには丈夫な稚魚を育てる必要がある」と話されていた。

 

ダムのスリット後にサケの漁獲が昨年の3.7倍増

せたな町管内8ヶ統あるサケ定置網のうち、漁獲量が最低だった良瑠石川近海定置網で、4基の治山ダムのスリット化後に漁獲量が1位、2位になった。せたな町管内では、昨年(2020年)の漁獲量は前年の1.8倍増。本年(2021年)は10月5日現在で昨年の3.7倍増と報道された。

せたな町では2010年から良瑠石川の治山ダムをスリット化。これを皮切りに、須築川の砂防ダムは2020年にスリット化が完了。また、同町付近では島牧村の千走川支流九助川の治山ダム、折川の砂防ダムがそれぞれスリット化され、南部の乙部町でもスリット化が行われている。

出典:2021年10月7日・北海道新聞(渡島檜山版)

北海道水産林務部・令和3年秋サケ沿岸漁獲速報10月10日:URL:https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/4/3/3/8/3/8/5/_/031010-1.pdf

漁獲増はダムのスリット化と関連しているのか?!

治山ダム・砂防ダムの下流では砂利が供給されない。そのために河床低下が進行し、河岸崩壊・山脚崩壊が多発するようになる。上流でもダムの堆砂が満砂になれば流れが蛇行するようになって、山裾を浸食し、山脚崩壊を発生させる。こうして、ダムの上下流から大量の土砂が流れ出し、雨のたびに濃い泥水が流れるようになる。サケ稚魚やサクラマス稚魚が浮出する春先の雪どけ増水の泥水は酷いものだ。春先、濃い泥水が流れる川でサケ稚魚を観察したことがある。泥水を避け、川岸や細流に入り込み、身を寄せ合っている。よく見ると、体から粘液を出して身を包んでいる。粘液を体から出すには相当な体力を消耗することだろう。また、口から吸い込んだ泥は、エラから吐き出す際に微細な砂粒でエラを傷つけ炎症を起こす。体力を消耗した上に、エラの炎症で稚魚の負担は相当な筈だ。誰も知らないところで多くの稚魚が命を落としているのではないか。

ダムをスリット化すると、砂利が流れ出すので河床低下が緩和され、河岸崩壊・山脚崩壊が止まり、濃い泥水の流れ出しが抑止、低減される効果がある。春先の雪どけ増水から濃い泥水が無くなれば、サケやサクラマスの稚魚は体力を消耗すること無く、健康に育つことが出来る。つまり、生残率が向上し、元気な稚魚たちが海に下るわけで、その結果、回帰率も向上することだろう。北海道さけますふ化場は回帰率を向上させるために、丈夫な稚魚を育てることを一つの目標にしていたのだから、十分その理に適う。

昨年は前年比で1.8倍、本年は前年比で3.7倍だから、このまま3.7倍増で終漁まで続けば、1.8倍×3.7倍=6.66倍となり、2019年に比べれば、なんと6.66倍増にもなる。急激な漁獲増だ。これがダムのスリット化と関連しているかどうか、今後の推移を見守りたい。

 

北斗市長に「公開質問状」を提出 … 北斗市民の会

「新幹線トンネル有害残土を考える北斗市民の会」(以下、「北斗市民の会」)は、2021年8月11日付けで北斗市長に公開質問状を提出した。

「北斗市民の会」は、新幹線トンネル工事での掘削土に含まれる膨大で高濃度のヒ素やセレン、鉛、カドミウムなど不適切な処理は深刻な問題であるとして、地下水や河川水汚染、土壌汚染が発生しないように「遮水型の保管」施設に未来永劫に保管管理していくことを求めている。北斗市・村山「きじひき高原」直下の採石跡地に、地べたに直置きしていることは、北斗市の基幹産業でもある農業用水の汚染を引き起こすとして、処分地の見直しや処分の方法についての見直しを求めている。

これまで、「北斗市民の会」は、水田など農地の水源となっている大野川の河川水や扇状地の地下水の汚染を心配して、村山の残土捨て場から流れ出している濁水を採水して分析に出し、環境基準超えのヒ素が流れ出している事実を突き止め、管理のずさんさを指摘してきた。しかし、北斗市は根拠の無い意味不明の反論を示し、「北斗市民の会」が水質調査を委託した農業団体の調査機関の信頼性にまで言及する有様で、汚染の事実を躍起となって、もみ消しにかかった。

北斗市長は、3月議会公の場で北斗市民の会を、「科学的な根拠に基づかない不適切な情報の流布をする団体」として誹謗中傷し、市長としてあるまじき発言をしている。そんな折、市長の発言が因果応報となって跳ね返ってくる事態が発生した。北斗市村山残土捨て場の地下水から高濃度のセレンが検出され、住民生活に深刻な影響を及ぼす緊急事態が5月に発覚。急遽、8世帯に井戸水の使用を停止させ、飲用水を配布する事態に発展した。

今、この時点でも地下水汚染は広がっている。一刻も早く汚染源を特定し除去しなければならない。しかし、除去しても土壌中にしみ込んだ土中の汚染は続く。一旦、汚染されたら対策は極めて困難である。その処置の難しさは、汚染発覚から3ヵ月経過した今も、機構からも北斗市からも市民や議会に対して調査報告や対策について何も示していないことからも分かる。

「北斗市民の会」は「科学的根拠に基づかない不適切な情報を流布する団体」と北斗市長が言うのならば、それでは北斗市長のいう科学的根拠に基づいた説明をしていただきたいとして、以下の通り公開質問状を提出した。

 

 

 

北海道のヒグマ対策質問書への回答から見えてくる、札幌市東区で発生したヒグマによる人身事故

北海道のヒグマ対策について、2021年4月5日に知事宛に提出した現行の「ヒグマ関連予算」と、ヒグマ対策のあり方の見直しに関する質問書への回答が、4月26日付けで、知事からではなく担当部署から届いた。

道民の血税で行う事業を担う担当部署からは、質問に対してまともに答える姿勢が見られず、再度、回答を求めたところ、5月10日付けで回答が届いた。

この回答を得た後の6月18日、札幌市東区で市街地をヒグマが徘徊し、人的被害が発生した。北海道からの回答を読み解けば、東区の人的被害は起こるべくして起きた人災被害であることがお分かりいただけると思う。

分かりやすいように、質問と回答を以下に並べる。

ヒグマが、今まさに出没している時には、北海道は関わらないということだ。それを裏付けるように高額な北海道の「ヒグマ関連予算」令和2年度1,760万円、令和3年度1,950万円の内訳には、ヒグマ出没時の予算は組まれていない。

出没しているヒグマを抑止するのではなく、ヒグマの識別や資料の入手を目的にした予算であることが分かる。また、徘徊を放置しているとヒグマの行動がどうなるのか?についての答えは無い。

ヒグマの出没抑止は市町村がやることであって、北海道は「ヒグマ出没対策事業費」とは「技術開発」を目的にした予算だという。

同様に、「ヒグマ出没対策事業費」は「技術開発を総合的に行う」ことを目的している予算だという。

ここでも「ヒグマ出没対策事業費」は、「調査事業(費)」と回答している。30年以上もヒグマ出没対策をして来ていながら、今さら基礎資料が必要だという可笑しな話だ。

ヒグマを芳香剤で誘引し、餌でおびき出す行為は「餌付け」行為には当たらないという。学習能力のあるヒグマが、芳香剤の臭いや餌の味を覚えれば、同様な臭いが人里にあれば出て来るようになるではないか。ヒグマのこうした行動拡大の可能性については答えていない。

毎年、約2,000万円もの高額な予算を組んで、30年以上の実績を経てしても、いまだ「事故防止」や「普及啓発」、「体制整備」についての知見が足りないという信じ難い話だ。

30年以上も調査・研究していながら、今なお「基本的なデータを収集する」という。今まで何をやって来たのだろうか…?

約300万円はICT等の活用を検討・検証する予算だという。ICTを活用しなければ、ヒグマの出没を抑止することが出来ないらしい。

札幌市東区でヒグマが出没し、人的被害が発生したが、「市街地周辺ヒグマ出没対策事業費」として計上された約1,100万円は、こうしたヒグマの出没を抑止する予算ではなく、「ヒグマの体毛を採取する」予算だった。

以上のように、北海道の「ヒグマ関連予算」は調査・研究が目的の予算であって、道民をヒグマの危険から守る目的には使われない予算であることが分かった。こんな対策だから、札幌市野幌、藤野、簾舞、真駒内でヒグマの出没が繰り返されて来た訳だ。ヒグマの出没の「抑止」が、されていないのだから当然である。その当然の流れとして、また東区でヒグマが出没し受傷する人的被害が発生した。出没騒ぎの現場に「ヒグマ関連予算」に関わる専門家は見えず、警察官らがヒグマを追い回していた。追い回され、追い詰められたヒグマはパニックに陥り、何をするか分からなくなり危険になることくらいは誰でも想定できることだ。挙げ句は、ハンターを動員して追い詰めての銃殺処分となった。追い詰められ、逃げ場を失い、怖くて怖くて怯えきったヒグマの哀れな表情が目に焼き付いている。初期対応が適切であれば、住民が受傷することもなかったし、このヒグマも殺されることは無かった。人目を忍び、夜間に徘徊し、明るくなる前には戻るような智恵を持った賢いヒグマだったのにである。「ヒグマ関連予算」からは、ヒグマ出没騒ぎが繰り返される理由が読み解ける。このままでは、今後も東区のように、ヒグマが市街地を徘徊することが続くだろう。ヒグマ関連予算が見直しされない限り、人的被害は絶対に解消されることはない。現行の北海道のヒグマ対策は、「ヒグマ出没抑止を目的とした予算では無い」ことを、「北海道のヒグマに関する調査・研究のあり方は間違っている」ことを、ヒグマの棲む地に暮らす私たち道民、札幌市民はよく理解しておく必要がある。

この東区のヒグマ出没騒動から、図らずもヒグマの出没抑止対策には研究者や専門家は不要ということが明確になった。研究者や専門家は、市街地を徘徊するヒグマを自分の調査・研究目的で放置し、餌付けをし、手に負えない危険なヒグマに仕立てあげ、挙げ句は檻罠で他個体のヒグマをも巻き添えにして、無差別に捕獲して銃殺処分しているのが実態である。本気で道民の生命・財産を守るのであれば、ヒグマの出没情報を得た時点で、即時に現地調査に入り、出没経路を特定して、迅速に出没経路を電気柵で封鎖して、ヒグマの出没を抑止することが北海道として執るべき策だ。現場の指揮は、ヒグマ追跡のエキスパートであるハンターに任せれば良いのだ。ヒグマの行動を読み取れる経験と多くの知見を持ったハンターにこそ、この「ヒグマ対策予算」を充てて、スピーディで的を射たヒグマ出没抑止対策を担ってもらうことの方が、よほど私たち道民の生命・財産を守るに相応しい。無益な殺生をも起こさない真のヒグマ出没対策が確立出来るだろう。

改めて北海道知事に「ヒグマ関連予算」の見直しと、真のヒグマ出没抑止対策への転換を早急に願い求める。

 

 

サクラマス保護河川「臼別川」サクラマス稚魚(0+)調査

せたな町大成区の臼別川にある砂防ダムは、サクラマス保護河川でありながら、砂防ダムが4基(うち1基は堆砂で埋没)、最上流部に治山ダム1基が設置されている。それぞれのダムに付けられた魚道は、直ぐに閉塞して機能せず、これまで漁業者が清掃を続けて来た。魚道の維持管理は困難であり、資源回復にはダムの撤去が望ましく、遂に漁業者からダムをスリットさせる要望が出された。2021年6月15日、スリット化着手前のサクラマス稚魚(0+)調査を行った。

まず、臼別温泉上手にあるB砂防ダムの堆砂域へ下りる。ここから上流域へ進む。

右側に魚道の出口が見える。

B砂防ダムの魚道の上流側の出口。出口は堆砂の溜まり具合で水位が上下に変動するので、上下三段階の出口が設置された高価で立派な魚道だ。だが砂や泥、流木で塞がっており、機能不全状態だった。
右側のコンクリート擁護壁の四角い切れ込みが魚道の入口である。極僅かの水しか流れていないから、サクラマスが上れる筈もない。
B砂防ダムは堆砂で満砂状態。小石や砂が目立つ。B砂防ダムから流れ出すのは小さな石や砂ばかりということが読み取れる。
B砂防ダムの上流は、「小学校理科」の教科書で習った小石ばかりが目立つ中流から下流の特徴になっていた。
B砂防ダムの上流の淵は砂が目立つ。
臼別川は谷間を流れる渓流である。砂防ダムが出来ると川相が一変することが分かる。B砂防ダムの堆砂域の淵は、砂ばかりのあり得ない光景だ。
B砂防ダムの堆砂域に注ぐ小さな川。ここでアメマス稚魚(0+)を確認した。

B砂防ダムの堆砂域ではアメマス稚魚(0+)はいたものの、サクラマス稚魚(0+)は確認できなかった。

そして、C砂防ダムが目前に立ちはだかる。

このC砂防ダムに取り付けられた魚道には水が流れていなかった。フキまで生えている状況から長いこと機能していないことが分かる。

C砂防ダムの魚道の出口は土砂で埋まり、陸地になっていた。

C砂防ダムの魚道の水路は泥で埋まり、オニシモツケ、イラクサ、イタドリが繁茂していた。C砂防ダムの堆砂域は、やや石は大きくなったものの大きさは均一で、砂が多い。渓流なのに、これではどう見ても中流の様相だ。

C砂防ダムは、堆砂で満砂状態なので堆砂域を上流へと広げ、その上流にあるD砂防ダムの堤体を埋めていた。驚くべき堆砂量である。

C砂防ダムの堆砂によって、D砂防ダムの堤体が埋没していた。

埋没したD砂防ダムの下流側に取り付けられた魚道。当然、堆砂に埋没していた。
埋没したD砂防ダムの上流側の魚道の出口。水が溜まっていた隙間にアメマスが隠れていた。

埋没したD砂防ダムの堆砂域に注ぐ小さな川の出合いで、陸封された体長20㎝ほどのアメマスを見つけて観察した。

D砂防ダムに注ぐ小さな川ではアメマス稚魚(0+)を確認した。堆砂の影響で渓流に似つかわしくない砂利が多く堆積していた。

CからD砂防ダムへと続く堆砂域の上流にあったE治山ダム。最上流部の治山ダムさえも魚道は砂利で埋まっていた。

E治山ダム魚道は砂利で埋まり、全く機能していない。
E治山ダムと直下の淵。透明度の高い美しい水なのだが…

E治山ダムの堆砂がどこまで続いているのかを調べる為に、更に上流へと向かった。やや大きめの石が現れるが、おしなべて同じ大きさのものが多い。

E治山ダムの堆砂域の上端付近。ここから巨石が見えてきた。苔むした本来ある姿の渓流が…しかし、サクラマスはここまで来られる術が無い…。

E治山ダムの堆砂域を超えたところから、巨石が目立ち、苔むした石が多くなった。

B→C→D砂防ダム→E治山ダムの堆砂域を調べた後、A砂防ダムの堆砂域に注ぐ臼別温泉脇の小さな支流を調査した。

B砂防ダム下流の臼別温泉脇を流れる小さな支流。ところどころ石の下に手を入れると暖かい温泉水が沸き出していた。
更に進むと、そこはもう魚は上ることが出来ない「魚止の滝」となっていた。この滝壺にはサクラマスとアメマスの1+、2+が見られた。

次に、A砂防ダムの堆砂域でサクラマス稚魚(0+)を探した。魚道は、出口の方へ押し出された砂利でチョロチョロ水が注ぐ程度になっていた。これではサクラマス親魚は遡上出来ない。

A砂防ダムの上流側の出口には砂利と砂が押し寄せ、出口はほぼ塞がっていた。水はチョロチョロ程度の流れで、これではサクラマス親魚は魚道を上れない。

A砂防ダムも満砂状態で、小石と砂ばかりだ。

A砂防ダム堤体に押し寄せた堆砂は小石が目立ち、砂が目立つ。写真の左の脇を流れる水が魚道の出口に繋がっている。
サクラマス稚魚(0+)を探す。
A砂防ダムの堆砂の右岸側の小さな流れの溜まりで、ヤマメ(サクラマス2+)を見つけた。

A砂防ダムの堆砂域の細流でサクラマス稚魚(0+)を見つけることが出来た。

A砂防ダムの堆砂域の細流で確認したサクラマス稚魚(0+)たち。撮影は橋本泰子さん。

その後、A砂防ダムの下流側でも探したが、見つからなかった。

A砂防ダム下流。
A砂防ダムの下流でサクラマス稚魚(0+)を探したが見つけることはできなかった。

A砂防ダム下流の淵にはサクラマス親魚がいた。ダムの魚道は上れないので、やむなく下流で産卵するしかない。

A砂防ダム下流の淵にはサクラマス親魚がいた。ダムの魚道は上れないので、やむなく下流で産卵するしかない。

調査データを地図に落としてみると、昨年はA砂防ダム魚道は機能していたようだが、稚魚(0+)の数から、遡上したサクラマスは少なかったと思われる。また、B砂防ダムの魚道は機能していなかったことが伺える。A砂防ダムから下流では稚魚(0+)が見つからなかったことから、産卵場所がなかったのか、卵が育たなかったのか?分からない。そして、サクラマス親魚が遡上してきているのに、A砂防ダム魚道は機能していない為、上流へ上ることは出来ないでいた。サクラマス稚魚(0+)が見られたのは細流ばかりだったことから、川岸の多様な流れが必要だと分かる。砂防・治山ダムがある川では河床低下が進行するために、川岸の多様な流れが失われるので、稚魚(0+)の生育には不利となる。

今回の調査で言えることは、①砂防・治山ダムの魚道はすべての魚道が機能していなければサクラマス資源は減少する。②ダムの堆砂域は上流へと広がり、かつ、河床の透水性が萎えるので産卵場所が減少する。(B砂防ダムから上流において、アメマス稚魚(0+)が見られたが、数が非常に少ないことから、アメマスですら産卵に適した場所が無かったと伺い知ることが出来る)③ダムの下流では微細砂・シルトが河床に堆積するので、産卵が行われても卵が窒息し育たない可能性が大きい。あるいは河床に微細砂・シルトが堆積して産卵に適した場所が失われている可能性が示唆される。(A砂防ダム直下ではサクラマス稚魚(0+)が見られなかった)

以上から、砂防・治山ダムがあるだけで、サクラマス資源が減少することは明らかである。臼別川でも、サクラマス資源が激減していると言える。せたな町では釣り人と漁師たちが毎年、臼別川の魚道清掃を手がけており、何度か私たちも参加したが、魚道内の砂利のかき出し、魚道出口を塞ぐ砂利の除去、出口から流れに繋ぐ溝掘りをしなければならず、大変な労力が必要だった。汗を流して奮闘しても、その後の増水で再び塞がるのだから、まさに労あって益ナシの徒労に終わる。魚道の維持管理は極めて困難なのである。

臼別川のサクラマス資源を回復させるためには、一刻も早く5基のダム撤去が必要であり、まずスリット化することにより、サクラマス親魚が確実に遡上できるようにさせ、且つ、至る所で産卵出来るような川の仕組みを蘇らせることが必要だ。間口を広くスリットすればするほど維持管理は不要となるし、水質良好な川なのだから、改善しさえすれば、間違いなくサクラマス資源は回復し増加する。

 

 

鉄道運輸機構・第三者委員会の信頼性失墜!…地下水汚染が発生!事態は深刻。

学識経験者で構成された「第三者委員会」は、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の組織内にある。

権威者揃いの立派な独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構付属”第三者”委員会。出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構

この第三者委員会で、ヒ素やセレン、鉛、フッ素、カドミウム、六価クロムなどの重金属混じりの「発生土」や、環境基準値を越えた重金属を含有した「対策土」を地べたに直置きする投棄処分の方法を提案。地べたに直置きでも、土壌浸透途中で有害重金属が土壌成分に吸着されるので、地下水に流れ出す時点では環境基準値以下になるから問題無いとして、地中の図を示して説明している。

出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構

「地下のことは、見て来た訳では無いから分からない。一寸先は闇だ」。地熱発電事業でボーリングを手がける現場の技術者はこう語る。しかし、機構の第三者委員会はまるで地中を透視しているかのように図を示して、住民に説明している。

北斗市の村山の対策土の投棄方法を示す図。地べたに直置きする方式が選択された。出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構
村山残土捨て場の地中の構造図が、まるで透視したように描かれている。出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構
対策土から土壌中に沁みだした重金属類は土壌成分に吸着されるという第三者委員会が示した概念図。土壌成分はマイナス荷電、重金属にはマイナス荷電型もあるのに、その説明もなければ、無限に吸着できるかどうかについても説明はされていない。また、有害重金属の吸着は即ち、有害重金属を濃縮することだから、濃縮された地中の土壌が環境に与える影響についての説明もないのだ。出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構
対策土から土壌中に沁みだした有害重金属の地中の挙動について、第三者委員会は詳細な数値を示して解説している。この説明は、現場を科学的に解析していると言えるだろうか? 出典:独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構

第三者委員会は、対策土処分地では土壌中に沁み出した有害重金属は土壌成分に吸着されるから、地下水へ流れ出す時点では薄まっており、問題は無いとしている。しかも、「予測地点の濃度は環境基準以下になることを確認しています」と明記されている。

しかし…?

①土壌成分はマイナスに荷電、一方、有害重金属の荷電はすべてがプラス荷電なのか、マイナス荷電なのかについて説明がされていない。

②吸着能力は無限にあるのか、それとも限界があるのか、これらについての説明がされていない。

③土中で土壌成分が吸着することは、言い換えれば、有害重金属を濃縮することだ。有害重金属が濃縮された地中の土壌はその後、どうなるのか?生態系や農業用水、生活用水へ影響があるのか否か、これについても説明がない。

第三者委員会の説明のどこに科学的な根拠があるというのか?

文献によれば、「人間社会の至る所で生産され、消費される重金属は環境に放出され、生態系に何らかの影響を及ぼす。低濃度で長期間にわたる汚染は生態系に対して目だたないが確実に悪影響を与えると考えられる」及び「低濃度の重金属イオンを含む多量の汚水を土壌に処理した場合、土壌は重金属イオンを能率よく吸着し、捕捉し、蓄積していき、少量の土壌に重金属イオンを濃縮する」とある。(参考:【3】土中における重金属の挙動:岡崎正規・水質汚濁研究)

北斗市では、発生土に含まれる有害重金属による地下水汚染や生活水の汚染を心配した農業者や市民が立ち上げた「北斗市民の会」の活動に対して、北斗市長は「一部の市民等による科学的根拠に基づかない不適切な情報の流布により、風評被害の発生などを大変憂慮しているところであり、厳に慎んでいただきたいと考えております」と、公の場で市民団体を誹謗中傷し、会の活動を阻止しようと躍起になっている。そんな時に、村山残土捨て場の地下水から環境基準超えの猛毒物質のセレンが検出された。第三者委員会が指南した科学的根拠に基づいた処分方法なのにである。では何故、現実に地下水汚染が発生したのだろうか?市民の訴えよりも、第三者委員会の科学的な根拠のない、不適切な処分方法に妄信した北斗市長こそ、市民の会の訴えが警鐘だったことを認識し、実害が発生したことの責任を負うべきである。

出典:2021年6月12日・函館新聞

出典:2021年6月12日・北海道新聞(全道版)
環境基準値を越えるセレンが検出されたのは「B-3」の地点だ。2021年6月11日に北斗市から配布された資料。
2021年6月11日に北斗市から配布された資料。
地下水を使用している住民。「この先、どのようなことが発生するのだろうか?」第三者委員会の信頼性は失墜し、その結果、地域の住民の暮らしが危機にさらされることになった。2021年6月11日に北斗市から配布された資料。
出典:Google Earth

「北斗市民の会」は、これまで降雨の度に、村山残土捨て場から白濁した水が、国道227号線の側溝へ入り、大野川へと流れ込んでいることを懸念して、側溝に沈殿した泥を採取して、科学的手法で環境基準を1.5倍超えるヒ素が流れ出していることを突き止めている。

村山残土捨て場の出入口付近。Google Earthの衛星写真T-3の地点で白い濁水が流れている。撮影:2021年6月4日
村山残土捨て場から流れ出す白濁水は、国道227号線の側溝へ流れ込み、大野川に注がれる。沈澱した灰色の物質で側溝は埋まっている。この堆積物から、環境基準1.5倍超えのヒ素が検出された。つまり、常時、重金属類が大野川に流れ込んでいるのだ。撮影:2021年6月4日
「T-3」集水枡で採水。撮影:2021年6月4日

「第三者委員会」は、独法・鉄道建設・運輸施設整備支援機構の内部に置かれた組織だ。組織内の会議となると、異論を挟めば解任されるかも知れないし、自分の将来を考えて発言を控えることもあり得る。会議では不都合な意見は怖くて発せられることはないだろう。第三者委員会が指南した処分方法で、地下水から環境基準超えのセレンが検出されたのだ。そればかりか、以前から日常的にヒ素が漏れ出している。一旦、地下水が有害重金属で汚染されると、汚染の広がりを調べるのは容易ではない。ましてや、汚染物質を除去するなど出来る筈もない。今後、どうするのか?有害重金属類が土壌浸透し、地下水に沁み出してくるまでにはそれなりに年月がかかる。また、膨大な量の環境基準超えの残土が運び込まれているから、地下水から有害重金属が検出されはじめると、一気に検出量は増加していく。

これで第三者委員会が指南する処分方法の科学的な裏付けが無いことが露呈した。しかし、トンネル工事は止まる筈もなく、残土の搬入先の変更の話しまでが浮上している。手際がよすぎやしないか?日常的にデータを改ざんをしている工区の情報が寄せられることがある。この現場でもデータの改ざんで数値を低くしていたが、頻繁な数値の異常な上昇に、もうこれ以上は改ざん出来ない事態に至ったのではないか。現場は汚染が広がり、手に負えないような深刻な事態に陥っているのではないかと思えば、怖ろしい。

そんな折、八雲町山崎川でも異常な事態が発生した。「山崎川が白く濁っている。上流の北海道新幹線トンネル工事現場から流れ出しているのではないか。どこに言えばよいか?」と、早朝に住民が訪ねてきた。取材に行くと、山崎工区で未処理のまま排水されていたことが分かり、住民の言う通り山崎川は、白い濁水で染まっていた。

北海道新幹線山崎工区から山崎川へ白い濁水が、未処理のまま山崎川へ排水されていた。撮影:2021年6月12日
異常に濃い濁水。撮影:2021年6月12日
このような排水が許される筈がない。撮影:2021年6月12日
排水口から約1kmほど下流の白濁した流れ。撮影:2021年6月12日

山崎川の川岸・川底は、白い物質があちらこちらにたくさん沈澱堆積している。

川底に白い物質が沈澱堆積している。撮影:2021年6月12日
川岸・川底に白い物質が沈澱堆積している。撮影:2021年6月12日
淵の底には白い物質が大量に沈澱堆積している。撮影:2021年6月12日
排水から約1km下流のところだが、川岸にも川底にも白い物質が沈澱堆積している。撮影:2021年6月12日

川岸や川底に白い物質の沈澱・堆積している量から、日常的に濁水を排水していることが読み取れる。山崎工区は、何度も未処理の垂れ流しをしている。誰かに見つかると一旦は排水を止めるが、また垂れ流しを繰り返している。今は些細な小さな環境問題だ、他人ごとだとして誰もが無関心でいると、北海道新幹線”祝”開通の暁には、沿線住民は土壌汚染・地下水汚染・河川汚染・海域汚染の負の遺産を押しつけられ、憂き目を見ることになる。

北海道は、北海道新幹線工事にかかわる環境影響評価について意見を添え、認可には環境に影響を与えることが無いようにと条件を付しているが、このような現場の状況を放置している。これまで「北斗市民の会」が、環境基準超えの汚染が発生していることを伝えても、「北海道としては検査はしない」と、道は住民の申し入れを突っぱねている。地域住民の暮らしは誰も守ってはくれない。残念ながら、行政が悪い、政治が悪いからだという前に、私たち個人個人の無関心こそが問題なのである。私たちの暮らしを見えないところでしっかりと支えてくれているのは他でもない自然環境なのである。身の回りの自然の全てが、私たちの暮らしを支えてくれているのを忘れてはならない。

 

 

 

須築川砂防ダム・スリット化後のサクラマス稚魚調査

2021年6月3日コロナ感染対策の上、せたな町の一平会メンバーとパタゴニア・スタッフの皆さんの協力を得て、須築川でサクラマス稚魚調査を行った。【昨年の秋に親サクラマスから産み落とされた卵がふ化し、今年の早春に浮出(泳ぎ出してきた)した1才未満の稚魚】

河床低下で川底が掘り下がり、川岸が崩れて(写真左側の)河畔林の土台が抜かれて根っこが剥き出しになり、倒れそうになっていた河畔林は、流れてきた砂利で土台が復活したので、もう、倒れる心配は無い。

須築川砂防ダムの下流で進行していた河床低下は、スリットから流れ出した砂利で緩和され、川岸の崖化が抑止されつつあり、河岸崩壊や河畔林は倒れる危険を免れる傾向にあった。しかし、スリットから流れ出す砂利の粒径は小ぶりなものばかりだ。須築川の河床低下を抑止し、河床を安定させるには巨石の供給が必要だ。

スリット化した須築川砂防ダム。間口幅は3.5m。下流には砂利が供給されていたが、まだ、粒径が小さい。
スリット化した堤体を上流から見る(堆砂側)。スリット化工事で砂利を左右に振り分けたこともあり、砂利が広く抜けているが、一気に抜けるようなことはない。
右側の崖上端までダムで止めた堆砂の痕跡。泥や砂を膨大に溜めていたことが解る。つまり、砂防ダムは流れてきた土砂から、泥や砂ばかりを選り分けて貯め込み、これらが攪拌されて下流に流れ出す。そして泥水を発生させ、泥川・泥海にすることが読み取れる。

砂防ダムが止める土砂の粒径は小ぶりなものが多く、且つ、流れ込んできた土砂は上流に向かって無限に堆砂して行き、膨大な量の土砂を止めることを知っていただきたい。ダム上流の渡渉で、この膨大な量の土砂は、上端まで6~700mも続いていた事が分かった。

右側の崖になった土砂は砂防ダムが止めていた砂利。上流に向かって堆砂は続く。スリット化した堤体から上流へ向かって6~700mも堆砂域が広がっていた。膨大な量だ。この堆砂域を過ぎると景観が一変する。

そして、堆砂域の上端からは、須築川本来の苔むした巨石がゴロゴロした雄々しい渓相へと一変した。

巨石は苔むしていた。
巨石の多い川だが、所々に淵や瀬があり、サクラマスの産卵には適した環境となっていた。写真の右岸でサクラマス稚魚を見つけることができた。
サクラマス稚魚2尾を確認。スリットを乗り越えたサクラマスが上流で産卵していることが確認された。

ここで、サクラマス稚魚2尾を見つけた。稚魚を見つけられたことは、スリットをくぐり抜けて上流で産卵している証である。貴重な発見であり、今後が楽しみだ。

巨石がころがる渓相が上流へと続いていた。

さらに上流への調査は、雪融けの増水が続いていることから、次回に。皆さん、お疲れ様でした。

止めていた砂利を下流へ流す「砂防ダムのスリット化」だけで、サクラマスばかりか、沿岸の海藻、ウニ・アワビまでが育まれるようになるのだ。

須築川の橋の近く、国道229号線脇の駐車場には看板が設置されている。須築川砂防ダムのスリット化によって、漁業資源の増加を期待する願いが込められている。

 

北海道のヒグマ対策について…知事へ質問書提出。

北海道は、人とヒグマの共存する社会やヒグマの地域個体群の保護を目途に、30年以上に亘りヒグマ対策に取り組んでいる。しかし、札幌市近郊の住宅地にヒグマが出没する度に、檻罠を設置して問題グマ以外も含めた無差別な捕獲を行い、容赦なく猟銃で殺処分している。この現状について、「北海道の羆問題を考える会(ヒグマ研究者の門﨑允昭氏らで構成)」は、北海道ヒグマ管理計画(平成29年4月1日~平成34年3月31日)が、本年度中に改正されるのを機に、2021年4月5日に、北海道知事宛に質問書を提出した。

春先、道路の法面のフキノトウを食べるヒグマ。

驚くことに、現行のヒグマ管理計画では、情報を得た時点での出没を抑止する対策がされていない。この管理計画は、ヒグマの出没情報を得ると、まず「出没個体の有害性判断フロー」の手順に従って、出没しているヒグマを抑止ではなく徘徊させたままにし、その間に「経過観察」や「調査研究」を行い、その結果をもって、どのような対策にするのかの選別をする手順になっている。つまり、ヒグマの出没を迅速に抑止することよりも、「出没個体の有害性判断」を目的にしたものなのである。こんな対策では、いつまで経っても人とヒグマとの共存は確立できない。ヒグマの地域個体群の保護もままならず、ヒグマの出没騒ぎが収束する気配は無い。

このような計画では、同一個体が徘徊を繰り返すと出没情報が増えるため、あたかもヒグマの生息数が増えたかのように錯覚させる。研究者や専門家ですら、「ヒグマは確実に増えている」と豪語する始末である。判断能力や学習能力などヒグマの習性の考慮に欠けた無知な研究者や専門家の提言を鵜呑みにしているとヒグマは絶滅に導かれてしまう。

出典:北海道ヒグマ管理計画(平成29年4月1日~平成34年3月31日)
出典:北海道ヒグマ管理計画(平成29年4月1日~平成34年3月31日)
出典:北海道ヒグマ対策の枠組

ヒグマの徘徊を放置していれば、その間にヒグマは身に危険が無いことを学び行動範囲を広げ、食べ物があれば食し、居心地がよければ居座るようになっていく。ヒグマに限らず、エゾシカ、キタキツネ、エゾタヌキなど学習能力のある野生動物に共通したごく普通の習性である。

札幌市南区のヒグマ出没騒ぎの報道では出没時間帯は夜で、昼間はどこかに身を潜めているという。それならば、一刻も早く出没経路を特定し、ヒグマが人里で諸々のことを体験する前に、学習する前に、間髪を入れずに出没経路を電気柵で封鎖して出没を抑止しなければならなかった。それを怠った為に、ヒグマは徘徊を続け、住宅地を歩き回り、警察官やハンターが出動したもののヒグマを目の前にして、手も足も出せない状況を作ってしまったのである。北海道が、「人とヒグマとの共存」を目指しているのであれば、野生のヒグマを初期に「しつける」。「やっていいこと、悪いこと」を学ばせる。つまり、電気柵を活用して、そこから先は「人間のなわばり」という境界線をヒグマに学ばせることが”要”となる。

最近では、「人を見ても逃げない、人を恐れない”新世代ベアー”が出現するようになった」とヒグマの研究者や専門家たちが苦言しているが、己の無知さに気付くことなく、手に負えなくなると、新たな習性を持ったヒグマが出現するようになったと言い訳しているに過ぎない。この”新世代ベアー”なる新語の発祥の地は、世界自然遺産登録の知床ウトロである。管理する知床財団は、ヒグマが現れたら人が引き下がるように指導し、推奨している。

知床財団はヒグマの前で人が引き下がるような対策を提唱している。出典:HTBテレビ・2017年放送。MIKIOジャーナル「ヒグマと人の”距離”」

知床五湖の遊歩道ではヒグマが現れたら、案内人がヒグマの目の前で観光客を引き下がらせ、遊歩道をヒグマに明け渡す。その後、遊歩道は閉鎖にする。この対応は、ヒグマの習性に基づいた、正しい対応と言えるだろうか?

知床五湖の遊歩道は閉鎖になり、ヒグマが居座れば、いつまでも閉鎖のままになる。

「人は引き下がり、道を譲ってくれる」と学んだヒグマは、次に人に出会った時、逃げるどころか人を見ても恐れもしない。やがて、彼ら研究者や専門家の言う”新世代ベアー”に仕立て上げられていく。この誤った対応によって、ヒグマは知床五湖の遊歩道を自分の「なわばり」と認知する。その結果、世界遺産登録後の知床五湖の遊歩道は、人は自由に利用することが出来なくなった。野生動物の習性を知っていれば、誰もが読み解ける流れである。

では、管理計画の出没を抑止しない理由は何故なのか?それは、学術調査が目的になっているからである。下記の表、北海道のヒグマ関連予算を見れば一目瞭然である。

北海道のヒグマ関連予算。

ヒグマの研究者や専門家たちは、人里に出没したヒグマを個体識別する目的で、ビデオ撮影やDNA分析用に体毛採取をしている。その目的のために、「芳香剤」や「餌」でヒグマを誘引する「餌付け」をしているのである。この「餌付け」行為は、調査や研究が目的なら良いと言う事は断じてあってはならない。

芳香剤に誘引されて現れたヒグマ。芳香剤の臭いを嗅いでいるのが分かる。    出典:道新ニュース。北海酪農学園大学佐藤喜和教授らが2019年6月11日に撮影したというビデオ映像から。

道新NEWS:https://www.hokkaido-np.co.jp/movies/detail/6050307841001

北海道や知床財団は、食べ物などでヒグマを誘引すれば、人と食べ物を関係づけるようになるので、食べ物などで誘引しないように指導している。一般人には「餌付けはするな。誘引するような物は置くな。」と指導していながら、研究者・専門家たちが、調査の為にやる「餌付け」行為は、容認しているのだから、呆れた話である。2021年4月、第204回国会に提出された自然公園法の改正案には、ヒグマの「餌付け」行為を厳罰化する目的で、国立公園や国定公園の中の「特別地域」などの範囲に限って野生動物への「餌付け」行為を規制し、30万円以下の罰金を科すとしている。地域限定とはなっているが、国立公園であろうがなかろうがヒグマはヒグマなのだから、調査や研究目的で芳香剤や餌で誘引する「餌付け」行為が招く問題も同じなのだ。調査、研究目的においても「餌付け」行為は即刻禁止すべきである。

知床財団は人間と食べ物を関係づけるから放置しないように指導している。出典:HTBテレビ・2017年放送。MIKIOジャーナル「ヒグマと人の”距離”」

そして、芳香剤や餌で誘引する「餌付け」調査は止めさせることだ。「餌付け」行為により、問題が発生し、何よりも人とヒグマとの関係が歪められてしまう。よって、現状のような調査が続く限りは、いつまでも人とヒグマの軋轢は低減することもなければ、人的被害の危険性はますます高まるばかりとなる。今のままでは、「人とヒグマとの共存」など到底実現し得ず、地域個体群の保護も出来る筈もない。

現在のヒグマの調査・研究は、芳香剤や餌でヒグマをおびき出す「餌付け」や、GPS発信器の首輪をつけたり、家畜の牛につける耳タグを付けたりしての調査を続けているが、こうした、うわべだけの、こぎれいで、安直な調査を繰り返している限りは、ヒグマという動物を理解し得ることは出来ない。自らが山に入り、汗をかき、踏査して野生のヒグマにたどり着き、ヒグマと長く対峙してこそ、ヒグマという動物がどういう動物なのかが見えてくるものだ。判断力や学習能力のある動物の気持ちまで読み取れるようにならなければ、相手を理解することなど出来るはずもない。手早く成果を挙げたいがために、短絡的に研究対象として扱っていれば、ヒグマ対策は根拠の無いものになってしまい、いつまで経っても功を奏しない。

研究者が識別しやすいように目印として家畜同様に耳タグがつけられ、首には重たいGPS発信器を付けられたヒグマ。
両耳には耳タグが、首には重たいGPS発信器を着けられたヒグマ。上を向けば肩にズリ落ち、下を向けば顎にぶつかる。首の毛は擦れ、見るからに痛々しい。

現行のヒグマ管理計画は、ヒグマの徘徊を抑止しておらず、その間にヒグマは諸々のことを学び、徘徊を繰り返している。その結果、手に負えなくなったという理由で、檻罠で捕獲して殺処分する…という流れになっている。北海道は、現行の計画がこうした流れになっていることに早く気がついて欲しい。もうこれ以上、無意味で無差別なヒグマ惨殺劇は止めるべきだ。よって、現行の「北海道ヒグマ管理計画」は、ヒグマの習性を考えた計画に練り直し、何よりも真っ先に出没を抑止する対策に変更した新しい計画を立案して欲しい。ヒグマが人里を体験し、学習する前に、すみやかに出没経路を特定し、人里への出入口に間髪を入れずに電気柵を設置して封鎖する「抑止」対策を行えば出没騒ぎは解決するのである。

以下に「ヒグマ出没抑止策の概念図」と北海道知事宛てに提出した質問書を添える。