ヒグマの被害に遭わないために…北海道広報紙「ほっかいどう」。その②

出没抑止対策を40年以上も蔑ろにしてきた北海道のヒグマ対策。地域個体群存続とする恰もヒグマの為に打ち出した方策のように聞こえるが、生息頭数を減らす駆除を打ち出した。

出典:北海道広報紙「ほっかいどう」8月号
出典:北海道広報紙「ほっかいどう」8月号
出典:北海道広報紙「ほっかいどう」8月号

ハンターによるヒグマ駆除への理解を求めている一方で、現場のハンターは、無意味な殺生は好んでいない。行政マンや研究者たちよりもハンターの方が当たり前の良心を持ち、人間味がある。捕獲された親子グマを目前に撃ち殺することなど、そう簡単に出来ることではない。恐怖に慄き抵抗するヒグマを撃ち殺す現場を行政マンや研究者たちは、一部始終をハンターと共有しているのか?この「理解」という文言は非常にずるい。クマを駆除する免罪符として行政がハンターを利用していると言えよう。

もはや心無い行政は、大学教授や研究者たちの進言に従い、人里から10km圏のヒグマをすべて駆除するという乱暴な手法を打ち出した。

ヒグマという動物は「縄張り」を持ち、それぞれに生活している。人里から10km圏のヒグマを駆除すれば、当然、「縄張り」が空く。自然界には非武装地帯という理念は無いのだから、空いた土地が利用できれば、そこに移住新参者が入り込むのは当然のことである。そう考れば、人里から10km圏をヒグマ空白地帯として維持できるのだろうか?

親から独立した子グマは新天地を求めて、「縄張り」の無い土地を求めて移動する。「縄張り」だらけで棲む場所が見つからなければ、広域を彷徨するだろう。

野生動物の暮らしや行動を考えれば、人里から10km圏をヒグマがいない「空白地帯」として維持するのは不可能だ。こんな基本的なことが、何故、ヒグマ研究者や大学教授や専門家という人たちには読み取れないのか不思議である。

ヒグマ対策の目的は、人里にヒグマが出てこないようにする出没抑止対策である。駆除よりも先にやるべき事は、出没抑止策を徹底することであろう。出没情報を得たら、抑止対策を繰り返し、繰り返し行い、ヒグマに人の縄張りであることを学習させることの方が、よほど効果があり現実的である。

ローカル紙のヒグマ専従の記者が、「札幌市全体を電気柵やバラ線で囲えと言うのか」と反論していたが、この記者は、ヒグマは学習能力のある賢い動物であることを侮っている。いかにヒグマのことを知らないかが露呈した呆れた発言である。出没情報を得た時点で出没経路を特定して、その周辺で抑止対策を繰り返し行うことだ。やがては学習したヒグマは出てこなくなる。抑止を適宜に繰り返すことをまずは徹底すべきだろう。

しかし実態は、ヒグマの出没経路を特定していながら、抑止対策を怠り徘徊を放置した上で、誘引物でおびき出して体毛を採取したり録画をすることなど、研究の為にDNAデータの取得が優先されている。その間にヒグマは行動圏の安全を学習してしまい、居座り続けた結果、手に負えなくり射殺する手順になっているのである。

北海道のヒグマ関連予算は、出没抑止対策とは無関係の「ヘア・トラップ」調査用の高額な費用が計上され、予算のほぼ全部を占めている。ヒグマ出没対策の予算は見当たらない。つまりは、目の前のヒグマをなすがままに放置しているということである。

北海道ヒグマ管理計画は、住民の安全よりも研究優先。

今回、鳥獣保護法の改正がされたことで、これからは国からヒグマ対策費として高額な予算が使えるようになる。より一層、広域でヘア・トラップ調査が行われることで人身事故は多発化するのではないかという懸念は拭えない。

札幌市も市内近郊でヘア・トラップ調査を行っているが、札幌市のホームページには記載は無い。従って、どこに設置されているのか知る由もない。ヒグマを誘い出す調査が行われていることを札幌市民の一体どれだけの人が知っているのだろうか?

札幌市・令和6年度ヒグマ生息調査業務仕様書・03_r6_2175_siyousyo

調査期間:令和6年契約の日から令和7年3月21日。出典:札幌市・令和6年度ヒグマ生息調査業務仕様書

2024年8月21日開催の「ヒグマ保護管理検討会」では、10年間で1.3万頭ものヒグマを殺す計画が示された。これに対して、専門家から「それでは手ぬるい、5年で達成せよ」という意見までが飛び出したという。たとえヒグマの頭数が減り、出没件数が減少したとしても、道民の危険な状況が変わることは無いということに気付いていただきたい。大学教授や研究者たちが求めるヒグマ捕殺は無差別殺戮である。人の暮らしを知り、人里圏との境目、つまり縄張り意識を持つ良識的なヒグマまでも、いなくなってしまう。果たして人を知らないヒグマばかりとなり、道民はヒグマの危険に晒され続けることになり、被害が低減されることも、抑止されることも無いと言えるだろう。

出典:2024年8月22日・北海道新聞
ヒグマの出没抑止対策よりも、ヒグマの捕殺を促し、調査、調査の報道となっている。出典:2024年8月22日・北海道新聞

北海道は頭を冷やし、目を覚ましていただきたい。調査に費やす莫大な税金を、実効性のあるヒグマ出没抑止対策にこそ使うべきである。事業を持ちかけてくるヒグマ専門家たちの進言に翻弄されることなく冷静に査定し、本当のヒグマ対策を確立してほしい。頭数をコントロールさえすれば、ヒグマの被害はなくなるとでも真に思っているのか?今ある空しいヒグマ対策では、道民の安全・安心な暮らしは守れないことは解っているはずだ。

ヒグマの生息頭数を意図的に操作されたデータを元に、翻弄される北海道のヒグマ対策。

北海道として、なまら恥ずかしいんでないかい!?