ヒグマ対策について北海道知事に質問書を提出

「北海道の羆問題を考える会」(共同代表:門﨑允昭ほか)は、3月24日に、北海道知事・鈴木直道氏宛に、北海道のヒグマ対策(管理計画)についての疑問8項目の質問書を提出した。

ヒグマは学習能力があり、”しつけ”が可能な動物である。ヒグマの出没情報を得た時点で、迅速に出没経路を特定することに専念し、間髪を入れずに出没経路を電気柵で封鎖することを繰り返し行い、ヒグマに「そこから先には立ち入れない」ことを学習させればよいことだ。ところが、このヒグマ管理計画は、研究者が芳香剤でヒグマを誘引してビデオ撮影することや、餌でおびき出しての体毛採取によるDNA分析、また、AI技術最新のICT技術を導入することとなっている。これらのすべては、つまりは、研究者たちのデータ収集であり、調査研究を目的としたもので、出没抑止対策とは全くの無関係な構成なのである。このような管理計画では、今後もヒグマ出没騒ぎは繰り返される。

北海道には、33年間のヒグマ対策の実績がありながら、出没抑止対策がいまだ確立されておらず、ヒグマの出没が繰り返されている。この現状を、ヒグマの生息頭数の増加に原因があると責任を転嫁しており、生息頭数を減らすために、あろうことか捕殺頭数を増大させる計画にしているのだ。

この「捕殺頭数を増大させる計画」とはどういうものか?…生息頭数が減れば出没確率(頻度)は下がる…当然である。出没確率(頻度)が下がれば、莫大な予算のほとんどを研究データの収集用に確保していても、「現に、出没確率(頻度)が下がった」と、批判をかわす「見せかけ」の効果を狙うことができる。それはまた、人目を忍び、人に関わらないように、健気に生きている無実のヒグマたちの大量殺戮劇を示唆する。

堂々とした風格の黒兵衛。私たちに道を譲り、無用なトラブルを避ける賢いヒグマだ。ヒグマ研究者よ、ヒグマは神々しく崇めるに等しい動物だということを忘れるなかれ…!

ヒグマは、知れば知るほどに賢い動物だ。むやみやたらに殺してよい動物ではない。ハイテク機器を駆使することに邁進し、ヒグマの観察を疎かにしている専門家・研究者達にはそうしたヒグマたちの健気に生きる姿が理解できるはずもない。まるでゲーム感覚で、機械的に次から次にヒグマを殺せてしまうのだろう。

2021年6月18日の札幌市東区のヒグマ出没騒ぎは、如何に北海道のヒグマ対策が役に立たないものであるかを如実に表している。無用にヒグマを追い回し「窮鼠猫を噛む」までに追い詰め、その結果、ヒグマをパニックに陥らせ、4人が負傷される事態を招いたのである。驚くことに、この騒ぎの渦中、ヒグマの専門家は現場にも現れず、ヒグマを知らない警察官が対処していたが、いったい誰が陣頭指揮を執っていたのだろうか…?これは調査研究に関わっている専門家・研究者らが、いかにヒグマの習性を知らなさすぎるのかを如実に示す事件と言えよう。このヒグマをマスコミは「凶暴なヒグマ」と表現している。それは「窮鼠猫を噛む」ネズミのことを「凶暴なネズミ」と表現するがごとしである。33年間もの調査研究の実績があるという北海道のヒグマ対策専門家・研究者らの”無知”が招いた、ごく初歩的なミスである。警察による検証が必要な事件でもあった筈だ。マスコミは、こうした真相(深層)にこそ、掘り下げて取材し、二度と繰り返さないためにも検証してほしいものである。