生命を育む川の仕組み

加工済・トリム・ウグイ・File1558

春先、ウグイが川の上流に集まり、川底に産卵します。
秋になるとアユが川を下り、川の下流で川底に産卵します。
東北や北海道では秋にサケが川に上り、川底に産卵します。
ウグイの親は卵を産むとどこかへ行ってしまいます。
アユやサケの親は産卵後、一生を終わります。
親は卵を川底に産みっぱなしにして、卵を置き去りにするのです。

ウグイの子
ウグイが産卵してから1~2ヶ月後、川岸の浅いところにいるウグイの小さな子。

初夏、川岸にウグイの子どもたちがたくさん泳いでいます。

翌春、サクラが散る頃にアユの子どもたちが群れをなして川を上ってきます。
北国ではフキノトウが頭をもたげる早春、川岸にサケの子どもたちが群れています。

親がいなくても卵はちゃんと育っているのです。
いったい誰が、卵を育てたのでしょうか?

魚は我が子を川に託している

水は高い方から低い方へ地表を流れたり、地中に染み込んだりしながら、川となって流れています。
川底の石と石の間の隙間を、水が通り抜けていきます。
地表から地中に浸透した水は地下の地層を通り抜けて、川底の石の間からも湧き出してきます。

卵は川底の石の間の水が通り抜ける場所に産み落とされていたのです。
卵は常にきれいな水にさらされながら、常に水が入れ替わる川底の石の間で、酸素をもらいながらすくすくと育っていたのです。

親はこうした場所であれば、卵が育つことを知っているというわけです。
親は卵を産みっぱなしにしたのではなく、我が子の命を川に託していたのです。
親がいなくても卵が育つ、この仕組みこそが、川に備わった「生命を育む川のしくみ」なのです。

すぐに濁る川では卵は育つことができない

昨今の川は、増水すれば必ず泥水が流れます。
ちょっとした雨でも泥川になります。

2015-04-03・砂蘭部川・増水時の2号砂防ダム・KAZ_0356

2015-04-03・砂蘭部川・増水時の2号砂防ダム・直下・KAZ_0367
雪解けや、ちょっとした雨でも増水する。2015年4月3日

2015-04-03・加工済・砂蘭部川・増水・泥水・KAZ_0315

2、3日もすれば水は澄み、綺麗になり、水質を測れば「清流日本一の川」と評価されます。しかし、泥水が流れた後の川を、よく見てください。

2015-05-06・砂蘭部川・泥だらけの川岸・
水がきれいになっても、川底の石の間に大量の微細な砂・シルトが堆積している。石の間が泥で埋まってしまえば、水は石の間を通り抜けられない。そこに卵があれば窒息してしまう。かつてはサケの稚魚がうじゃうじゃいたのに、1尾もいない。こうして魚が絶滅していく。清流日本一の川から…。2015年5月6日
2015-05-06・加工済・砂蘭部川・堆積した泥・KAZ_0121
川底の石は泥を被り、泥に埋まっている。サケの稚魚が1尾もいない水辺はまさに沈黙の川だ。川岸には厚く泥が堆積している。川は異常な状態にあるのに、専門家たちは黙んまりだ。こうして、ひとつの河川からまた一つ種が消えていく。2015年5月6日

水は透明できれいだが、川底を長靴でグズグズと掘れば、煙のように泥が舞い上がり、大量の泥が堆積していることが分かる。これでは魚類や水生生物は繁殖も生活もできなくなる。こうして川は不毛の川になり果てていく。

水は透明できれいに見えますが、川底を長靴でグズグズと掘ってみると、煙のように泥が舞い上がり、大量の泥が川底に堆積していることが分かります。これでは魚類や水生生物は生活もできなくなり、繁殖もできなくなります。こうして川は不毛の川になっていくのです。

川底には大量の砂や微細砂、さらに小さなシルトが沈殿しています。
微細な砂、さらに小さなシルトは石の隙間に入り込み、川底を埋め尽くしてしまうのです。

河床低下で川岸が崩壊し、泥が川底に沈殿する
左の写真は、泥水が流れない川の底。小石と荒い礫だけ。右の写真は泥水が流れる川の底。石は泥(シルト)をかぶり、埋もれている。これでは魚の卵は育たない。

石の隙間が微細な砂やシルトで埋まり、隙間が塞がってしまうと、水は石の間を通り抜けることが出来なくなります。
そこに卵があれば、卵の周りの水が入れ替わらなくなり、卵は窒息してしまうのです。
いくら綺麗な水が流れていても、水が流れる仕組みが壊れると、卵は育つことが出来ないのです。

河床低下で川岸が崩壊し、泥が川底に沈殿する・アユとサクラマスの泥煙り・
左の写真はアユの産卵。川底から泥煙が立ち上がっている。卵は育たず、いずれアユはいなくなる。右の写真は産卵するために川底を掘るサクラマスの♀。ひどい泥煙が立ち上る。これでは卵は育つことが出来ない。北海道は、サクラマスの保護河川でありながら、こうした川の保全に取り組まず魚道で解決しようとするから、サクラマスは姿を消すことになったわけだ。

川に泥水が流れることは、魚たちにはとても深刻なことなのです。

「雨が降れば川が濁るのは当たり前」

「泥水の泥は自然のものだから問題ない」

本当でしょうか…?
疑問を持ってください。

もしも、そうであれば、魚はとっくの昔にいなくなっていたでしょう。
現代にもまだ少なからず魚がいるということは、裏を返せば、川は雨が降っても濁らなかったということです。
昨今の泥水が流れる川は異常な状態なのです。

全道で、日本中で、生命を育む川の仕組みが失われているのです。

川は危機的な状況にあるのです。